週刊 奥の院 6.22

■ 『文藝別冊 総特集 いしいひさいち  仁義なきお笑い』 河出書房新社 1200円+税
 デビュー40周年。

『バイトくん』と『ののちゃん』の舞台を歩くひさいちい散歩 でっちあげロングインタビュー
特別寄稿  いがらしみきお しりあがり寿 とり・みき 吉田戦車 秋月りす 西原理恵子 あずまきよひこ 宮部みゆき 村上知彦
仕事場&アイデアノート
単行本未収録 「ゲームセット」「前戯なき戦い」掲載
[ジャンル別]作品世界
リスペクトインタビュー 大友克洋






ロングインタビューに答えるのは「いしひいさいち」(抜粋)。

Q なぜ取材が嫌いなのか?
A 人として魅力のある作家なら人漫一体で読者サービスにもなりますが、私は人物がおもしろくないので自分で自分の営業妨害をしているようなもんで。
Q (漫画を描きはじめた頃の)好きだった漫画家は?
A よくウソをつくなと言われるのですが、私は漫画を描いていながら子供の頃から現在まで漫画を読む習慣がありません。
Q いしひさんが登場するまで4コマ漫画は『起承転結』が基本と言われていました。ところが起転転転、起承承結、あげくにオチのないオチとか斬新かつ衝撃的でした。4コマの既成概念を破壊したといわれていますがその点いかがですか?
A それは誤解です。そもそも4コマ漫画に起承転結というセオリーは存在しません。
Q は?
A まず起承転結に則って4コマを描く作家はプロにはおりません。4コマを愉しむにしても、リズムは多様であって要件ではありません。笑ってもらってナンボの現場には『秀作』と『凡作』の別以外なにもありません。あるとすれば観念的な読者の認識のフレーム、『あと知恵』としてあるにすぎず、4コマに起承転結がないのはけしからんといった論議はどこか幼い気がします。おそらくコマ4個と4文字熟語の符号による錯誤もあります。仮にそれが東南西北だとすれば北がないないとか言い出すんじゃないスか。ともかくないものは壊せませんからわたしは起承転結を破壊したおぼえなどありません。
Q えー、今の見解マジですか?
A でっちあげです。
(09年11月から3カ月病気療養、復帰後は『ののちゃん』だけ)
Q 病気で仕事とか人生について考え方がかわりましたか?
A もう足を洗おうと思いました。『ののちゃん』は隠居仕事です。1日4コマ1本、写経と称しています。……

 写真嫌い、インタビュー嫌い、プライベートは一切明らかではない人です。「でっちあげ」とは言うものの、インタビュー記事は画期的。
 05年6月、F店長企画「いしいひさいちまんがまつり」でいしいさんが出版社を通して送ってくださったサイン本を公開。

(平野)