週刊 奥の院 5.17

■ 郄田郁 『みをつくし献立帖』 角川春樹事務所 ハルキ文庫 686円+税 
 オールカラー。『みをつくし料理帖』シリーズに登場する料理のレシピをまとめ、著者自らが料理を再現する。
 本作品の誕生秘話、登場人物について、取って置きの「内緒話」を披露。
 さらに、書き下ろし特別短篇も収録。
 さらにさらに、主な舞台である「つる家」の間取りをイラストで紹介。描くのは「くとうてん」イシサカゴロウ。
 毎回郄田さんはサインを入れてくださいます。
 私がいただいたのを公開。郄田さんはもちろん、イラスト・ゴロウ、構成・編集担当S嬢にも書いてもらいました。どういう訳かF店長までが書いてくれるというので、丁重に拒絶。でもね、そんな“Fサイン”もOKという奇人・変人・変態さんがいらっしゃるので、世の中というものは不可思議です。
 郄田さんの文章。サイン会での読者との触れ合いや、本への熱い思い、本屋への温かい眼差し……、お人柄が表れています。
「子供のころ、本屋さんになりたかった」 
「私は紙で出来た本が大好きなのだ」
「例えば心に屈託を抱えたまま家路に就きたくない時、私は本屋さんを探します。紙の匂いを嗅ぎ、紙の手触りを味わって本を選ぶうちに、何時しか心は平静を取り戻します。本屋さんには、そうした不思議な力が宿るように思います。
 昔も今も、本屋さんは私の大切な場所です」
 
【海】で棚卸しに参加してくれはりました。
 郄田さん、ありがとう。
 





(平野) 
神戸新聞」5・15朝刊文化欄「有川浩の読書は遊びだ!」  この人も宝塚在住。
 現役アイドルの小説について。
 タレント本だと思って、話の種に買おうと新宿の本屋に。既存の作家を脇へ押しやっているのだろうと予想していたら、「探すのに少し手間取ったくらい」の陳列。本人が書店回り(営業)してポスターにサインを入れたと聞いて、その姿勢に先輩作家として共感。作品についても、「荒削りだが、光るものが」と評価。「次作以降を楽しみに待ちたい」。
 私が食いついたのは、この文。
「ジャニーズの看板を振りかざして書店の棚を荒らすことをせず、地道に書店回りをした彼は、新人作家として出版業界の流儀に倣おうとしている。芸名に物を言わせてあり得ないほどの大部数を刷り、話題書だから入荷しないわけにはいかない書店の弱みに付け込んで買い取りや責任販売制(返本すると損をする仕組みになっている)で荒稼ぎするような本と同列に扱うべきではない。」
 





“弱み”で注文する本屋も悪いのだけれど、ちょいと名の知れた人の本を「責任販売」とか「計画販売」とか言って、出版社は絶対損を被らないようにしよります。あちらの言い分は「絶対売れる」「書店の利益のため」。こっちは、客注品を出荷してくれて、売れている本をコマメに重版してくれたらいいんですけど。