週刊 奥の院 4.22

■ ワイルド 『サロメ』 平野啓一郎訳 光文社古典新訳文庫 724円+税
 5.31〜6.17 新国立劇場 演劇『サロメ』上演 
翻訳 平野啓一郎  演出 宮本亜門  出演 多部未華子 成河 麻美れい 奥田瑛二 他

http://www.nntt.jac.go.jp/play/salome/
 新訳の依頼は、新しい舞台のためと考えた演出家・宮本から。 
 この文庫シリーズはじめ、翻訳文学の新訳が出版されるようになったが、岩波文庫にある名作はいまだ旧字旧仮名遣いのものが多い。『サロメ』もそうだ。訳者の平野も古典的名訳に愛着がある。
 

 しかし、原作に時代を越えるポテンシャルがあるにも拘らず、翻訳にそれがなく、結果、諸共に時代に取り残されてしまう、ということはある。逆に、翻訳が原作のポテンシャル以上に時代を越えさせることもあるだろう。いずれにせよ、翻訳作品が現代の読者から遅れ始め、遠ざかり始めたならば、新訳を考える時機である。

 最後の場面(サロメがヨカナーンの斬首された首に口づけする)の台詞だけ比較。

岩波文庫版 福田恒存
サロメの声  あゝ あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ、ヨカナーン、お前の口に口づけしたよ。お前の脣は苦い味がする。血の味なのかい、これは?……いゝえ、さうではなうて、たぶんそれは恋の味なのだよ。恋はにがい味がするとか……でも、それがどうしたのだい? どうしたといふのだい? あたしはたうとうお前の口に口づけしたよ、ヨカナーン、お前の口に口づけしたのだよ。

平野訳
サロメの声  ああ わたし、お前の口唇(くちびる)にキスしたよ、ヨカナーン。お前の口唇にキスした。苦いのね、お前の口唇って。血の味なの?……ううん、ひょっとすると、恋の味なのかも。恋って、苦い味がするって、よく言うから。 ……でも、それが何なの? 何でもないことよね? わたし、お前の口唇にキスしたのよ、ヨカナーン、お前の口唇に、わたし、キスした。

(平野)
◇ 全国新聞社ふるさとの本フェア(6)
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金沢検定受験参考書 1238円+税  金沢検定予想問題集2012 1143円+税
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◆ 北日本新聞社 http://webun.jp/shopping/book
【出品書目】
乱世を駆ける木曽義仲巴御前 1905円+税 
富山城探訪 933円+税