週刊 奥の院 4.5
■ 井上ひさし 『言語小説集』 新潮社 1300円+税
92年〜95年、「中央公論文芸特集」に掲載した「日本語」をテーマにした掌編小説。
ワープロのカギ括弧(「」)記号が恋をする。
文法的に意味をなさない台詞に役者が狂わされていく。
昔作った歌が耳鳴りになった原因とクレームをつけられる作家、危機が迫る。
女性がそばに来て、気持ちが昂ぶってくると言葉を言い損なう青年。
方言学者、50年振りに方言で復讐。
はるか南方の島々と三陸の港町をつなぐ言い伝えと言葉の共通点、その秘話。
突然舌がもつれる駅員。「大便長らくお待たせいたしました……」「電車が這ってまいります。どなたも拍手でお迎えください」
記号が擬人化され、方言がとんでもない大役を果たす。
これは「言語による演劇」である。 筒井康隆
装幀 和田誠
(平野)