週刊 奥の院 3.31

■ 国立歴史民俗博物館編 『被災地の博物館に聞く  東日本大震災と歴史・文化・資料』 吉川弘文館 2500円+税 
はじめに  平川南(民博館長)
報告1  岩手県立博物館における文化財レスキューの現状と課題――陸前高田市救出資料を中心に――赤沼英男
報告2  陸前高田市の被害状況――博物館施設を中心に―― 熊谷賢 砂田比佐男
報告3  東日本大震災による文化財被害と救援活動  高倉敏明
報告4  歴史資料の保全に向けて  菅野正道
報告5  文化財レスキューで大学博物館にできること  加藤幸治
報告6  東日本最震災と歴史資料保護活動――福島県の現状と課題―― 本間宏
報告7  民家からのミング・生活用具の救出活動――宮城県気仙沼市小々汐地区―― 小池淳一 久留島浩
編集を終えて  久留島浩(民博副館長)

「はじめに」で、平川館長が紹介しているのが(2)の熊谷の新聞インタビュー。

(被災した史料の)修復よりも新規購入が手っ取り早いかもしれない。でも残そうとするのは、収蔵品一つ一つに「物語」があるからです。たとえば、カワセミの仲間アカショウビンの剥製。10年ほど前、小学校の体育館で衝突死して生徒らが丁寧に埋葬したのですが、博物館に残す方が良いとの声が出て、掘り出して作製しました。生徒達は卒業後も、「おらほのアカショウビンはいる?」と訪ねてきた。そんな物語を諦めるわけにはいきません。今は何より、人々の暮らしの復旧と地域の復興が最優先。建物としての博物館の再建が何年後なのか、国や市の計画次第です。でも、整った街並みが戻っても、文化財が残らない復興は真の復興ではない。それは、この土地の自然、文化、歴史、記憶の集積であり、陸前高田アイデンティティーだからです。

 倒壊による破壊。津波による被害。
 海水にぬれる。ぬれたものが急速に乾燥して変形したり亀裂したり。カビの発生と繁殖。汚損、腐朽、塩分による害、異臭、ヘドロ他さまざまな物質の固着、サビ……。
 資料を建物の中から、泥の中から救出し、洗浄、修復。作業者の危険もある。作業途中でカビが発生することも。被害の度合いで保管場所が異なる。根気がいる作業だ。
 専門家・ボランティアなどマンパワーだけでなく、研究機関や自治体の物心両面の協力も必要。
 本書は、修復方法の手順を図版で詳細にレポートするとともに、資料保護のためのネットワーク構築を訴える。
(平野)
●東京代々木上原「幸福書房」さんのことは、池澤夏樹編『本は、これから』(岩波新書、2010年)で初めて知りました。
 NR出版会「新刊重版情報」に登場。
http://www006.upp.so-net.ne.jp/Nrs/memorensai_21.html
●ひとり出版社「夏葉社」島田さん。「古い本を丁寧に復刻」(神戸新聞3.29)
 4月に「伊藤整」の本。