週刊 奥の院 3.17

■ 松本健一 『海岸線は語る  東日本大震災のあとで』 ミシマ社 1600円+税
『海岸線の歴史』(09年、同社)で、「日本のアイデンティティは『海岸線』にあり」と論じた。 
 

 日本人は古来「海やまのあひだ」に暮らしてきたが、近代以降とくに一九六〇年代の高度成長以後、その意識が急速に海岸線から遠ざかっていることへの根源的違和感と危惧のおもいをのべた。……
(震災後、多くの人家がなくなった海岸線を歩いた)
そうして復興の全体的プランと現実的な復興プランを考えてみようとしたのである。

序章  海岸線が動いた
第1章 宮城編――平地がつづく  仙台平野 多賀城 七ヶ浜 松島 石巻港
第2章 岩手編――リアス式海岸  三陸リアス式海岸南端部 陸前高田 宮古と山田線 宮古
第3章 福島編――断崖がつづく  広野・久三浜・忽来(なこそ)・塩屋崎 福島第一原子力発電所 末続・富岡町 相馬・小名浜
第4章 東京の近郊  福島第一原発の鉄塔 幕張と浦安
終章  海岸線は語る

 千葉県から岩手県北部までの地図がある。長い長い海岸線のすべてが被災した。
 美しい松原が壊滅し、漁港、漁場が津波に呑まれた。

 わたし自身、海岸線を主題においた本を書き著していながら、東日本大震災が起きるまでは、地震津波によって海岸線がこれほど大きく変容することを想像していなかった。驚きを禁じえないというのが正直な述懐であるとともに、このたびの大震災をまえに、改めて海岸線について考えねばならないとおもい、また大震災の前と後で日本の海岸線はどう変わり、その変化は何を意味するのかを考えなければならない、とおもったのである。

 海岸線の回復と今後の防災・減災を考えるうえでも、歴史的・文明的な視座を欠かすことはできない、と。
(平野)全国書店新聞 3・15号 「うみふみ書店日記」アップ。
http://www.shoten.co.jp/nisho/bookstore/shinbun/news.asp?news=2012/03/15