週刊 奥の院 2.24

◇今週のもっと奥まで〜
■ 柏木いづみ 『ヒカル いろがさね裏源氏』 文春文庫 667円+税 
 主人公原田ヒカル、財界の大物大壷魁太の妾腹。容姿、財力にアッチ方面も備えたエリートさん。その愛の遍歴。紹介文は、父の愛人藤江の思い。

……
 闇というのは、なんといいものだろう……。
 はじめてヒカルに抱かれて以来、藤江はそう思うようになった。藤江が大壷魁太との情事をこの世で最大の快楽と信じていたのは、彼の実子であるヒカルと出逢うまでのことだった。
 父の魁太は藤江を包む水だった。時と場合に応じてどんな形にもなり、藤江のあらゆるところに沁み込んで、まるで無重力の世界にいるような気分にさせる水。
 ヒカルは風だ。いつそばに近づき、いつ離れていったのか――いつも憶えがない。ときとして彼の存在を予感するだけで、藤江の身体の奥底に強烈な陶酔が訪れる。彼と時間を過ごしたあとにあれこれ思い返してみても、本当に身体の交わりをしたのかどうか、たしかな記憶が残っていないことがままある。頭に残っているのは、沈丁花とグレープフルーツと鞣し革、そしてほんのすこしの雄の匂いが混ざり合った馥郁たる風の記憶だけなのだ。
……

■ 『大阪人 4月号増刊  ザ・大阪のデザイン  建築からオムライスまで大阪の「かたち」大全 』 (財)大阪市都市工学情報センター 838円+税 
城郭・寺社のかたち  大阪城 住吉大社 四天王寺 大阪天満宮
喫茶のかたち  〜時代と街の象徴のような「喫茶店」のデザイン〜
街のかたち  グッドデザインの散歩道
● 通り自体が建築ミュージアム
● 大阪に息づく懐かしい“和”の道
● 橋のかたち 大阪“デザイン橋”五傑
大阪ミナミ 暖簾と包装紙は味ほどに物を言う
ザ・大阪名作デザイン史  中央公会堂 甲子園球場 地下鉄 大丸心斎橋店 インディアンカレー 通天閣 かに道楽 太陽の塔 文楽劇場 海遊館 繁昌亭 大阪駅 ……

編集後記 大阪のデザインは世界的にもあなどれない。 長友啓典
……大阪はデザインの先進国。カップラーメンのパッケージやラブホテルのインテリア、たこ焼き器の鉄板、どれも世界一。
……グッドデザインって無機質になりがちやけど、ハートがあって、おもしろくてニコッとできる、グローバルな「大阪スタンダード」を見てほしい。通天閣エッフェル塔のパクリなんて言われるけど、ちゃんと大阪のもんにしているところが、らしいでしょ。……

 休刊決定。困る。
http://osakajin.osakacity.or.jp/index.html
(平野)