週刊 奥の院 2.22

■ 朝山実 『アフター・ザ・レッド  連合赤軍 兵士たちの40年』 角川書店 1600円+税
 本書の発端は、週刊誌の仕事で、連合赤軍事件を題材に『レッド』(講談社)を描いた山本直樹に取材したこと。モデルになった人たち=事件当事者たちに強い関心を持つ。

……頭の中で、四十年間イメージしてきた「連赤のひと」と目にした彼らはかなり違っていた。おそらく街ですれ違っても、誰ひとり、あの事件のひとたちだと気づいたりしないだろう。それくらいに、ふつうに見えた。……

 なぜ、あなたは、私たちの話を聞きたいのか? 彼らに訊き返される。

……煎じ詰めれば、記憶のなかにある「ひと形」が消えずに、事件の概要については、わかったつもりになっても、そのたびに、するっとすり抜けていくものがあり、彼らはどういうひとたちだったのか、ずっと気になっていた。それが答えといえば、答えなのだが。……

第1章 「正しいと思ってやったのだろう」 親父が言ったのは、それだけです。
第2章 「お父さんの人生が書いてあるから」と、 息子に自分が書いた本を渡しました。
第3章 出所してからしばらくは、大きな声が出なかった。
第4章 自己犠牲に魅せられたところもあったんだと思う。
付    現代の肖像 山本直樹さん  性と暴力で描く「残る理由」
少し長めの解説――というより同時代を、彼らほど突き詰められなかった、大多数の活動家の一人の極私的感想
連合赤軍事件史年表

 M氏は15年の刑期を終え、現在塗装業。労働組合活動で坂口弘と出会い革命左派に参加。あさま山荘事件前に逃走。母方の叔父(大企業の管理職だった)が会社に辞表を出して警察に付き添った。出頭前に寿司を食べさせてくれた。

……練馬警察に行って、叔父さんが声を張り上げるんだよね。「連合赤軍のMが自首してきました」というと、なかから十人くらいぶっ飛んできて、取調室に連れていかれた。三十分くらいして、警視庁から、ぞろぞろと刑事がやって来て、「おまえ、殺されなかってよかったなぁ」と。
 そのあと笑い話があって、遅れて保谷警察(母の実家はその管轄)がやって来て、「なんで、保谷にいたのにうちに出頭しなかったんだ」と。……
――いま自分がこうして生きていることを、どう捉えています。
……死に損なったからね。これからの世の中がどうなるのか見てみたいというのはあるけれど、でも、まあ、生きていてよかったなぁというのもあるしね。永田も森のことも見たし。坂口のことも見たし。見たくないものを見たというのもある。

 収録できたのは4人。
 総括リンチ、粛清で犠牲者は14人。狂気の沙汰・凄惨な事件だが、朝山は取材するうちに、「永田さん」「森さん」と口にできるようになったと告白する。
(平野)