週刊 奥の院 2.18

■ 難波知子 『学校制服の文化史 日本近代における女子生徒制服の変遷』 創元社 
4800円+税
 著者は1980年岡山県総社市生まれ、お茶の水女子大学研究員、比較社会文化学。 
第1部 描かれた和装と描かれなかった鹿鳴館洋装―― 一八八〇〜一八九〇年代における女子生徒服装:女子学校制服成立前夜

明治政府の欧化主義政策から大日本帝国憲法発令までの時代背景と女性の公的服装の整備状況を踏まえた上で、女子師範学校、官立女学校、キリスト教主義の女子校における生徒服装の展開を跡づけ、鹿鳴館時代の影響や評価を再考。

第2部 描かれた袴と描かれなかった改良服―― 一九〇〇〜一九一〇年代における女子生徒服装:女子学校制服の成立

女子中等教育の制度整備と日清戦争後の服装改良の動向を踏まえた上で、袴と徽章が女子学校制服として定着していく過程を中心に検証。


第3部 描かれた制服と描かれなかった標準服―― 一九二〇〜一九三〇年代における女子生徒服装:女子学校制服の変容

女子教育に影響を与えた第一次世界大戦と生活改善運動を時代背景として押さえ、女子学校制服が洋服化していく過程をつぶさに検証。


 目次の「描かれた〜、描かれなかった〜」というのが気になるでしょう? 
 本書では制服変遷の視覚資料として八幅の掛け軸(東京女子師範学校附属高等女学校の歴代制服を描いたもの)を中心に検証。制服の公式記録でなのだが、校史や卒業生の回想記録と照らすと、描かれていない制服が時代時代に存在する。公式記録の歴史観とは当てはまらなかった制服があった。
 

 女子生徒の服装は国家の思惑、学校の教育方針、女子生徒の判断や行動、保護者の要望、地域住民のまなざし、メディアや世論の反応など様々な影響が複雑に絡み合い、女子学校制服は価値観の衝突や揺らぎを抱え込みながら成り立ってきた。……

 更衣の時期になると、神戸の新聞紙上では、ある女学校の制服姿が掲載されます。季節の風物詩として定着しています。
(平野)
 荒蝦夷の新刊、伊坂幸太郎『仙台ぐらし』、【海】にも入荷しました。後日紹介いたします。