月曜朝礼 新刊紹介
【文芸】 クマキ
■ 精選女性随筆集 全十二巻 川上弘美・小池真理子 選
第1回配本
第1巻 幸田文 川上弘美選
第2巻 森茉莉/吉屋信子 小池真理子選
文藝春秋 各1800円+税
近現代の輝かしい女性作家の手になる随筆という宝の山を川上弘美さんと小池真理子さんが読み込み、極上のアンソロジーが編まれました。
続刊 「倉橋由美子」 「有吉佐和子/岡本かの子」 「武田百合子」 「宇野千代/大庭みな子」 「白洲正子」 「石井桃子/高峰秀子」 「須賀敦子」 「中里恒子/野上弥生子」 「向田邦子」 「石井好子/沢村貞子」
幸田文と言えば、露伴の厳しいしつけを思うが、川上は「ぶっ飛んだかっこよさ」と表現。
なんて面白い女のひとなんだろう。
今は、このことばかりを、思っている。
「よく見せてくれた」という印象を、必ずわたしは得る。陰影もにおいもさわり心地も重みも、はっきりと見せてくれる文章なのである。それは、野太いといってもいいくらいの、あらわざだ。……
森茉莉。
……アパートの粗末な一室も茉莉にとっては、ヨーロッパの王侯貴族の部屋に様変わりした。茉莉は死ぬまで、茉莉が作った世界の住人でいることができた。子供のころ、鷗外から注ぎこまれた濃厚な、まさに奇跡としか言いようのない完璧な愛は涸れるどころか、終生、変わらずに茉莉の中にあふれていて、茉莉はいっときたりとも、その至福の世界から目を離そうとしなかった。(小池)
吉屋信子は少女小説のイメージが強いが、岡本かの子、林芙美子、宇野千代ら同時代作家について書いていて、
尾崎放哉のことも書いている。
【雑誌】 アカヘルなら紹介するだろうな、と思って。
■ 『雲遊天下 109』 ビレッジプレス 500円+税
特集:「ブレないふたり 鎌田慧と小野民樹」 「2011年 わたしの読書」
「ブレないふたり」
ライター鎌田と岩波編集者小野に岸川真インタビュー。
小野は「六法」編集から「新書」に。岩波新書の基本は学術啓蒙書だが、76年新藤兼人の『ある映画監督 溝口健二と日本映画』を出す。
【小野】(次は鎌田さんを提案)会社は「そいつは何者だ?」って訊くわけ。で、「ルポライターだ」って答えたら、「カタカナ肩書きのやつはここでは出さない」って言うんだなあ。
【岸川】怪しい存在みたいな扱いですよね。
【鎌田】いまでも怪しい存在だよ(笑)。だから、ノンフィクション作家って名乗らないんですよ。ルポライターは、真っ当じゃないってイメージが強いんだね。本を作るような真っ当な人間じゃないんだ。
デザイナーもイラストレーターもダメ。鎌田の本『労働現場』が出たのは80年。小野はその後単行本に異動、鎌田の本を出していく。
【児童】
■ ヒュー・ロフティング 文と絵 南條竹則 訳『トミーとティリーとタブスおばあさん』 集英社 1500円+税
「ドリトル先生」の作者ロフティングが書いたもうひとつの人間と動物たちとの感動物語。
なんてけなげな動物たち――知恵を出しあい、力を合わせて、大活躍!
100歳のタブスおばあさんの窮地を救い出す。
【文庫】
■ 安部ヨリコ 『スフィンクスは笑う』 講談社文芸文庫 1400円+税
ヨリコ(1899〜1990)、北海道東鷹栖村(現在旭川市)生まれ、東京女子高等師範学校在学中に伊藤野枝・山川菊栄らの「赤瀾会」のビラを掲示して退学処分。22年同郷の医師安部浅吉と結婚。翌年長男誕生、安部公房。本書はその2週間後に刊行した小説。
カバーの紹介文。
恋愛に至上の喜びを見いだす男女五人の愛憎劇は、やがて人間の本質へ迫るドラマへと一変していく。
(平野)