週刊 奥の院 2.2

■ 坂崎重盛 『豚もおだてりゃ木に登る  河童もけなせば…』 新講社 1300円+税
『神保町「二階世界」巡り』『「絵のある」岩波文庫への招待』の著者。
 今回は人間観察エッセイ。「豚もおだてりゃ〜」はよく使われる。人をほめておだてて励まして人間関係を円滑にしましょう、という言葉。「河童」は著者が考えたもので「河童もけなせば流される」、「河童の川流れ」にひっかけた。人間関係における言葉の使い方の悪例を示す。誰も、いろいろありましょう。 
 

 この本では、
――人の能力や、可能性や、やる気を抑え込む原因を何とかさぐり出し、それを取りのぞき、さらに積極的に爽快に生きてゆくことはできないだろうか――
 を模索しようと思う。

 処分するつもりで本を整理、合い間に古雑誌をめくる。
「そこには人の心の歪みと、これに対して表現することの重要性が実に興味ぶかいエピソードによって語られていた」
 と、種村季弘の文章を紹介する。
 貧しい生まれで幼くして両親を亡くし、精神的に障害もあり、粗暴な行動で獄につながれた男。医師が、彼に鉛筆と紙を与えると凶暴な発作が治まる。彼は獄中で病死するまで約30年、表現者として生きた。後に作品はシュルレアリストたちに見出され、現代アートの先駆となった。
 読書で得た古今東西の名言やエピソードを引用して、読む者を元気づけてくれる。
 新講社は、斎藤茂太他心理学者・精神医学者のエッセイを中心に出版活動。
(平野)