月曜朝礼 新刊紹介

【文芸】 クマキ 

■ 垣谷美雨 『七十歳死亡法案、可決』 幻冬舎 1500円+税  
2020年、高齢者が3割を超え、社会保障費がパンク。政府は「七十歳死亡法」を強行採決。年寄りを安楽死させることに。施行は2年後。
 近未来小説だが、このままではひょっとするとひょっとするかも。2020年なら私だってカウントダウンでっせー(生きていたら)。
――早く死んで
――家族とは?
――長生きして申し訳ございません
……
 ある崩壊家庭をとおして、家族、高齢化社会の行く末を考える。
 著者は1959年兵庫県生まれ(市町名不詳)。05年、『竜巻ガール』で小説推理新人賞。





【芸能】 アカヘル [

■ 山根貞夫 『日本映画時評集成 2000−2010』 国書刊行会 4200円+税 
キネマ旬報」に25年連載中。その第143回から262回まで。全470ページの大著。以下続刊。
 大島渚と時代劇  相米慎二の死  映画が壊れてゆく  深作欣二を悼む  うつっているものがすべての世界  鈴木清順は挑発する  ガラクタの山のなかで新進気鋭の秀作に出喰わす  子供の映画における凹凸の表現  若い人はなぜ映画を見ないのか  見ること自体が事件になる  ……












【海事】 ゴット 
■ 雑誌 『CRUISE クルーズ』 3月号 海事プレス社 933円+税 
“自由と憧れを実現する船旅マガジン”  特集:第20回クルーズシップ・オブ・ザ・イヤー
 読者とBS朝日「世界の船旅」視聴者が選ぶ客船ランキング。
 総合部門第1位は「飛鳥?」、2位「にっぽん丸」、3位「クイーン・エリザベス」。他、日本船舶部門、外国船船会社部門など8部門。
 で、担当者が紹介したいのは、大型客船「コスタ・コンコルディア」の座礁・横転事故について専門家の論評2編。
 ヒューマンエラーとしか言えない。























■ 『機構共有船「写真・技術集」 平成23年版(平成19年10月〜平成23年9月竣工)』 「月刊・共有船」海交新社(神戸) 7000円+税  
「機構」とは、独立行政法人「鉄道・運輸機構」で、鉄道・運輸業務の他、旅客船・貨物船の建造に関する支援(資金の安定供給・建造技術支援)も行なう。
「共有船」とは、国内貨物を輸送する船舶を「機構」との共有方式により建造した船。
 本書は、共有船の船名、船主、造船所、用途、総トン数、航路、主機関のメーカー、速力などを記す船の名鑑であり、資料集。
 2Fではこんな本を置いています。もちろん直仕入れ。ISBNもバーコードもありません。

















◇ 2.5 イベントの本
■ 太田治子 『夢さめみれば 日本近代洋画の父・浅井忠』 朝日新聞出版 1700円+税
 
 

 東京の京橋にあるブリヂストン美術館は、都会のオアシスだと思う。印象派を中心とするあまたの名画が、東京駅近くの小さなビルの美術館の中で微笑んでいる。およそ三十五年前、そこで一枚の油絵と出合った。明治の洋画家浅井忠の『グレーの洗濯場』である。二十代半ばの無能なOLだった私は、その掌に乗る位の可愛い絵にすいこまれていった。青く澄んだ川の水が、木々の間から射し込む光に包まれてきらきらと輝いていた。なんて、さやかな水だろう。ここは、どこなのか。水辺に、赤い屋根の洗濯場がみえた。一人で洗濯をする女性の姿も、水は鏡のようにくっきりと映し出していた。……


 カバーの絵が「グレーの洗濯場」。
 著者は後にNHKテレビ「日曜美術館」の司会アシスタントを務めて、浅井忠について知った。
 浅井忠(安政3〜明治40年、1856〜1907年)。佐倉藩の重役の子として生まれ、明治9年工部美術学校に入学、イタリアの画家フォンタネージから洋画を学ぶ。
 洋画排斥運動の嵐の中、明治美術会を設立し、田園風景を描き続ける。「自然を先生に」という師の教えは、明治33年のフランス留学で花開く。40代半ば、10歳下の黒田清輝より15年遅れの留学だった。 

……明治三十五年に帰国するまでの二年間に浅井忠がグレーで描いた絵はどの絵も、のびのびと輝いている。いつか私も、グレーに行きたいと思った。


 書名は、明治34年に浅井が弟に宛てた手紙の一節から。 
「夢さめみれば大日本」
 祖国の他国侵略への批判でしょう。また著者は、ヨーロッパに戻りたいという浅井の希望――みはてぬ夢――も表現しているよう。
 太田さん、昨年10月に神戸で講演。その縁で今回の神戸でのイベントも決定。
 2.5(日) 元町高架下商店街で講演。「モトコー美術・観」 
 終了後、【海】にてサイン会。 
 尚、講演会につきましては既に満員札止めです。
(平野)