週刊 奥の院 1.30

■ 詩 ヘンリー・スコット・ホランド  絵 高橋和枝
『さよならのあとで』 夏葉社 1300円+税 
 ひとり出版社「夏葉社」の新刊は、詩。
 それも、1編、42行の言葉。
 社主による(あとがきにかえて)より。
 

 人はだれでも死別を経験します。
 親しい人、ときには、自分の命を失っても守りたいと思うような人とさえ、別れます。
 それは、人生を生きていくうえで、一番つらい出来事です。
 だれかの言葉や、匂いや、音や、光や、空気や、風や、すべてのことが、その人の不在を静かに告げます。 
  私はもう二度と立ち直れないのではないか。
  何度も、何度も、そう思います。
 けれど、私たちは思い出すことができます。
 その人のいた場所や、いつも座っていた椅子、読んでいた本、ずっと履いていた靴、微笑み、くしゃみ、声、指の先。
 その人がどれだけ私のことを愛してくれていたのか。
 そのことに思いをはせたとき、私たちは、再び、ゆっくりと立ち上がることができるのだと思います。……

 ……
 私の名前がこれまでどおり ありふれた言葉として呼ばれますように
 私の名前が なんの努力もいらずに自然に
 あなたの口の端にのぼりますように。

 ……  
 多くの人が、今、悲しみの中にいることでしょう。これからもすべての人に悲劇は必ずやって来ます。どこかで悲しみにケジメをつけなければならないのだけれど、それはひとりひとりの心の問題なのだけれど……。何とか整理できて平静に戻れたとしても、切なさ辛さは繰り返しやってくるでしょう。
 そうであっても、少しでも支えになりたいという、社主の志です。
  原作者はイギリスの神学者
 http://natsuhasha.com/
(平野)