週刊 奥の院 1.15

◇ ちくま文庫新刊
■ 今尾恵介 『地図の遊び方』 680円+税  
 地図制作者でライター、著書多数。
 本書、1994年けやき出版、2000年新潮OH!文庫。
 地図にはいろいろ。
 本屋にあるのは、日本地図、世界地図、都市地図、道路地図、鉄道地図に、社会科の地図帳、国土地理院地形図。住宅地図や歴史地図というのもある。
 海図や地球儀、それに道案内の略図も地図。
 著者はいつも地形図で遊ぶそうだ。

 地形図だけが「ちゃんとした地図」だなどとは思いません。地図というのは地上の姿をある「主題」または「主観」に基づいてデフォルメしたものと定義したとき、いやそんな定義などしなくてもわれわれ利用者、見る人間の前には平等です。

 また、「地図は読むもの」という教えについて。
「正しい読図方法」を学ばねばならぬ。簡単に地図の楽しみ方を覚えられてたまるか、と言う気持ち。だが、「見るだけの人がいてもいい」。さらに、「地図を地図として使わなければならない、なんてこともありません」と。
【海】では、廃版の海図を利用した封筒やブックカバーを販売しています。2F「港町グッズ」コーナーにて。
 本屋の地図売場は年々縮小されています。カーナビの普及や、インターネットの影響。地図出版社も激減。
 紙の地図も絶対必要ですけど。
 目次
1 地図の向こうに見えるもの 海ばかりの地形図 原野の地形図 軍隊と地図 他
2 お国変われば地図も変わる モナコミュンヘン 日本のお役所記号 他
3 地名が変わっていく…… 大塚の北に南大塚 地名抹殺 他
4 使いやすい地図とは 不便な会社別路線図 道路地図の選び方 他
5 自分流地図の楽しみ方 百年前、ここは何だった? 神社仏閣鉄道 他

■ 所澤秀樹(しょざわ) 『鉄道地図 残念な歴史』 840円+税 
 幸通史・文化研究家、旅行作家。
 目次
1 「鉄道地図」の拡張と衰退 寂しくなった鉄道地図 ローカル船退治の首謀者 他
2 官と民と「鉄道地図」 明治時代の私鉄 鉄道国有化以降 他
3 信条なき「鉄道地図」の行方 私鉄の解体と国有鉄道の誕生 「国鉄改革法」 他

 赤字路線が生き残り、地方の幹線が分断される。新幹線が通ったせいで、毎日通勤・通学に使う路線がJRではなくなる。鉄道地図に潜む矛盾は、苦悩、迷走、謀略に満ちた歴史から生まれた!

■ 子母澤寛 『游侠奇談』 1000円+税 
 

 侠客の話、古来里人の胸から胸に残されて、伝説口碑に聞くべきものは多いけれども、さてこれを文書に求めて虚実をたしかめるんとすれば、その証拠の余りにも少ないのにこまらせられる。しかし少なきもよし、また多きもよろし。即ち侠客の話は、語って面白く、聴いて面白ければそれでよろしいのである。……

 子母澤が侠客のことを書きとめようとしたきっかけは、記者時代1925(大正14)年の国定忠治七十五年祭を取材したこと。まとめて本になったのが1930年、民友社から。すでに「戊辰物語」や「新選組始末記」なども書いていた。32年には新聞連載「国定忠治」で、大衆小説作家としての地位を固める。
 本書、71年桃源社、81年旺文社文庫

■ 山尾悠子 『ラピスラズリ 760円+税 
 幻想連作小説。2003年国書刊行会より。
 カバーの紹介文より。
 

 冬のあいだ眠り続ける宿命を持つ〈冬眠者〉たち。ある冬の日、一人眠りから覚めてしまった少女が出会ったのは、「定め」を忘れたゴーストで……。
 秋、冬眠者の冬の館の棟開きの日。人形を届けにきたに運びと使用人、冬眠者、ゴーストが絡み合い、引き起こされた騒動の顛末……
 イメージが紡ぐ、冬眠者と人形と、春の目覚めの物語。

(平野)