週刊 奥の院 1.12

◇ NHK生活新書
■ 辺見庸 『瓦礫の中から言葉を わたしの〈死者〉へ』 740円+税
 1944年石巻生まれ。元共同通信記者。芥川賞講談社ノンフィクション賞中原中也章受賞。幅広い執筆活動、それも病の身でありながら。最新作『眼の海』が高見順賞。 

……故郷が海に呑まれる最初の映像に、わたしはしたたかにうちのめされました。それは、外界が壊されただけでなく、わたしの「内部」というか「奥」がごっそり深く抉られるという、生まれてはじめての感覚でした。叫びたくても声を発することができません。ただ喉の奥でひくくうなりつづけるしかありませんでした。……

 石巻市の死者は3279人、行方不明651人(2011.11.30現在)。

……友人たち、知人たち、とても親しい友人の母、祖母らがふくまれます。想い出をたぐっては、ひとりひとりの顔をなぞっております。ああ、寒かろう、つらかろうと毎日、毎夜、想います。これというわけもなく、逝った人びとを「あの死者たち」と総括したくない思いが最近、頭をもたげ、胸のうちでは「わたしの死者」と呼んでおります。大したちがいはないようで、これらの言葉は個人的にはちがいがあるのです。……

 
 原民喜石原吉郎堀田善衛らの極限を描いた言葉を手がかりに、言葉と記憶について考える。
 1 入江は孕んでいた――記憶と予兆
 2 すべてのことは起こりうる――破壊と畏怖
 3 心の戒厳令――言葉と暴力
 4 内面の被爆――記号と実体
 5 人類滅亡後の眺め――自由と退行
 6 わたしの死者――主体と内省

■ 石井光太 『ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死』860円+税
 いきなり、「外国人が日本で死ぬとどうなるか?」という話。 

 著者がパキスタン人に聞いた話。
 死体は内臓を抜かれて防腐加工、冷凍保存、飛行機で祖国に。費用は、東南アジア70〜80万円、欧米70〜120万円、中東100万円超。カンパなどコミュニティが大きな役割を果たす。
 外国人の暮らし・生態について何も知らなかったと気づく。
 親・祖父母の世代から“在日”としてコミュニティを作っている人たちではなく、新しいコミュニティがある。グローバリズム時代での外国人たちの実像を取材。
 日本で暮らす外国人は210万人、旅行・ビジネスで来日する人は年間800万人、不法滞在者もいる。私たちの知らない「ニッポン」がある。
 1 外国人はこう葬られる  エバーシング、冷凍搬送、墓地……
 2 性愛にみるグローバル化  韓流セックスビジネス、中国人妻、イスラエル「バスタ」……
 3 異人たちの小さな祈り  韓国系協会とホームレス、占い師、日本の宗教団体……
 4 肌の色の違う患者たち  外国人医療、HIV感染者……
(平野)
 ●11日からアカヘル復帰しました。お待たせしました。
 ●F店長から。HPリニューアルしています。新コーナー「古本コーナー」「港町グッズ(マリングッズ)」をぜひ。   http://www.kaibundo.co.jp/index.html
 ●10日、人文書版元と書店員呑み会に参加。また大はしゃぎした懲りないおっさんたち(私含む)。
 ●明日の本屋をテキトーに考える会、緊急召集。メンバーよ、連絡待て。