週刊 奥の院 12.24

■ 『日本の笑い  遊び、洒落、風刺の日本美術』 平凡社コロナ・ブックス 1800円+税 

「笑う」という行為は根源的な感情の表現で、日本美術の中にも「笑い」をテーマにした作品が見出されます。仏教の教えや悟りを開いた人物を尊んで描かれたにもかかわらず、その姿や表情がおかしかったり、真面目な絵物語のストーリーや表現をよく見ると「笑い」が含まれていたりします。また浮世絵などに描かれた擬人化された動物や昆虫、奇妙な妖怪や鬼の姿はいくら見ていても飽きることがありません。そこには「笑い」への飽くことのない探究があると共に、「笑い」の中に込められた世情への風刺や鋭い批判精神が見てとれるからです。

 江戸時代を中心に絵画・工芸作品に見られる、微笑、苦笑、哄笑……、先人たちが仕掛けた「笑い」の罠の数々。
“笑う顔には福来たる”
雪村周継(せっそんしゅうけい・室町前期の禅僧)の「布袋図」。布袋さんは七福神のひとり。この布袋さん、タリラリラ〜ンと飛んでいる。
「色絵青磁唐子宝文布袋形置物」 (1730〜60年代)の布袋さんは、今流「ドヤ顔」。
 谷口香嶠(こうきょう・明治大正の日本画家) 蛭子大神図」。蛭子はイザナギイザナミの第一子だが、葦の舟で流される。中世以降恵比寿信仰と結びつき尊崇される。このゑびすさんの顔こそ「ゑびす顔」。
 伊藤若冲(江戸後期)「十夜会図」北斎漫画」の人物は「まんが 日本昔ばなし」の原形ではないか。
 お化け、怖そうだが、よく見るとユーモラス。『にほんのかたちをよむ事典』(工作舎)の「妖怪」の項を思い出す。
(平野)