週刊 奥の院 12・9

■ 高山宏 『雷神の撥 新人文感覚2』 羽鳥書店 13000円+税
 千ページに迫る大著。

……元々、上下巻に二分される心積もりもなく、世間震撼し、書肆並びに作者ともども雷名満都に轟くはずの一書であった。それがこのように、デザインの対照からしてかくも楽しげな二作に分かれた以上、先に吹いた「風」に対する「雷」の特徴やいかに、ということにもなる。風(ふう)はピクチャレスクとつながりを持った文章が主、対して雷(らい)はまさしく学問やアートの世界での騒々しい賑やかしの役(ロール・role)を轟かせ(roll し)おおせたマニエリスムにかかわる文章を、轟音、遠雷とりどり集めて一挙に鳴りはためかせた、とでもいうか。……

 英語タイトル The Role of Thunderous Questions
1の『風神の袋』は The Way the Wind Blows  
目次
1 たかが英文学、されど英文学いのちがけ
2 アリス・イン・ザ・アンダーグラウンド 1960S
3 「マンガは萬画である」
4 見えるものはこんなにも楽しい(Ⅱ)――表象論応用篇
5 ホモ・リーデンス(笑うヒト)になる――山口昌男
6 マニエリスム、今日は――種村季弘
7 さよならだけが人生だ

 著者略歴の写真は、女装……、真面目にやってらっしゃいます。
(平野)