週刊 奥の院 11.29

◇ 鶴見俊輔さんの新刊。
■ 鶴見俊輔小田実 『オリジンから考える』 岩波書店 1900円+税
 小田実が生きていたら……という想定で架空対談「小田実との対話」。
――小田さんは、生きているうちに私を殺していますね。
小田 そうだったかな。

『終わらない旅』(新潮社、2006年)の中で、鶴見は死に葬式も。
鶴見がファンレターを書いて、作品について対談することになったが、小田の病で実現しなかった。
――(ベ平連について)新しい運動は新しい代表を必要とする。私は小田実に代表になってもらってはどうかと仲間にもちかけて、同意を得た上で、西宮にいた小田実に電話した。なぜ小田実に話をもちかけたか。「若い日本の会」の発起人に小田の名前がなかった、という記憶のためだ。……私について言えば、まったく、いいかげんな行動だった。
小田 そう言えるね。あなたの言うことを裏書できる。
……
――小田実はどこででも書く。すこし時間があると活動の合間に書いた。……書きすぎだという印象を与えている。しかし、これは、ベ平連の運動が大きくなるにつれて、資金の調達の必要も大きくなったことの結果だ。
小田 たいへんな負担だ。ベ平連の九年のあいだにたまっていった。
――それでもべ平連を放りだすことはなかった。(著作を読み通して)縁日に、自分の縄張りに何軒も店を出している親方が、ひとつひとつ店をまわって見ている感じがした。
小田 縁日の親方か。でも、たいしたテラ銭は取っていない。

 小田の講演、論文、小説の未定稿も。

鶴見俊輔語録 (1) 定義集 警句・箴言・定義  1400円+税 
    
   同    (2) この九十年         
1800円+税 皓星社 
 21世紀にはいっての鶴見の発言・著作から、“いまを生きる”支えとなる言葉・文・文章を選び出す。
(1) 
 

私のくらしの中でどうなっているのか。そのように自分の記憶をさかのぼって、何かをさがしあてるようにしている。
 私というものがないとしたら、今、このとき、この場でと言ってもよい。
 そういうふうに考える習慣は、早くから身についた。
 それは、私の生活の中で、何なのか。
 人間にとって何なのかから考えはじめたのではない。
 今の私にとってそれは何だと、考えられるかどうか。……

 悪人 軍隊の中でただ一人の反戦を実行するというのは、自分がある意味で悪人になって、それでやっていくという決心なんだ。善人は弱いんですよ。
 善人 善人は漫画を読まないですね。漫画を読まない人は恐い。
 いい人 そう、いい人はいけない。悪人性がないでしょう。だから、真面目な人、いい人は困るなあ。……
(2)
【読んだ本はどこへいったか】より。
○ よく「ぼくもマルクスを読んだ時があったよ」と若い人に言ったり、「若い時には西田哲学を読んだよ」とか言う人がいる。だけど、その読んだ本は、どこに行ったのかと問い返したい。
○ 本がむこうからにらんでいるという感じが、こどものころにはある。私にもあった。
○ とにかく速く浅く、ほかの人と同じように読むという読み方は、困るんですよ。読書サークルっていうのがあるでしょう。あれは本来、自分で本を読むのを助けるためのもののはずなんだけど、一度に集まって同じようにウワーッと読んじゃうから、どうにもならない。難しい本は一人で読むのがいいんです。難解な本は、自分で読んで、どこがわからないかがわかる、ということが重要なんだ。
 皓星社ハンセン病関連、復刻資料を数多く出版。
(平野)このところ火曜日は「月曜朝礼 新刊紹介」でしたが、28日呑みに言ったもので、準備できず。明日に。