週刊 奥の院 11.26

■ 佐野眞一 『怪優伝 三國連太郎・死ぬまで演じつづけること』 講談社 1700円+税

釣りバカ日誌』の人のいい社長役を思い浮かべるが、私のイメージでは“悪役”。  
 本書は2010年10月におこなわれたインタビュー。4日連続三國の自宅で映画DVDを見ながら、佐野が質問。「日本の戦後映画史を縦断する生きたフィルモグラフィーそのもの」という俳優の話。
 佐野は三國の内面に鋭く迫る。学生時代は映画監督を目指したとか。
 

 二〇一一年に米寿となったこの希代の俳優(わざおぎ)は、どんな思いで役者稼業をつづけてきたのか。そして、刻々と死に近づきつつある老いという季節をいまどんな心境で迎えているのか。
 三國は「怪人」「怪優」と呼ばれる。被差別部落出身者という出自をカミングアウトしているし、太地喜和子をはじめとする数々の女性遍歴は伝説化している。契約した会社以外の映画に出られないという五社協定違反の第一号になったのも三國だった。
 戦時中は兵役を拒否するため海外逃亡を図って失敗しているし、俳優として脂ののりきった五十歳直前には、それまでの名声も財産もすべてかなぐり捨て、パキスタンアフガニスタンに放浪の旅に出ている。……

 さあ、正体は暴けるか? 




















■ AERA編集部 『完全復刻 アサヒグラフ 関東大震災(大正12年10月28日発行特別号) 昭和三陸津波(昭和8年3月17日発行臨時増刊)』 (2冊合本) 朝日新聞出版 1800円+税 

アサヒグラフ』創刊は大正12年(1923)1月。大震災(9.1)によって本社屋焼失し休刊。10月28日に「特別号」発行。新聞は「大阪朝日」が増刷して東京に送った。

……日刊写真新聞が、その最大能力を発揮すべき秋(とき)に方(あた)って、その重大任務を果たすべき凡ゆる機関を奪はれたことは忍ぶべからざる大打撃であると同時に、読者諸君に対して誠に相済まぬことである。……

 瓦礫の山、焼き尽された町並み、津波で打ち上げられた大型船……、私たちの記憶にある風景がここにもあった!
 解説の言葉に、ないのは「原発」だけ、 とある。
(平野)