週刊 奥の院 11.20

平凡社新書
■ 武光誠 『平清盛 天皇に翻弄された平氏一族』 760円+税
 例年のことですが、NHK大河ドラマ関連本がゾクゾクと出ています。
 本書は、平安時代末の経済の急速な発展――農業技術進歩、農地開発――と平氏の繁栄、さらに日宋貿易による商業振興に注目。
 また、清盛の貴族社会での大出世について、「白河法皇落胤」説ではなく、後白河上皇との密約説(二条天皇との権力争いで後白河に付く)を唱える。






■ 畑中章宏 『柳田国男今和次郎 災害に向き合う民俗学 780円+税
 著者、62年大阪生まれ、多摩美大芸術人類学研究所特別研究員。
 関東大震災直後、柳田は国際連盟委任統治委員としてロンドンにいた。震災の報せを受け大使邸宅に日本人が集まる。   
 ある人が発言、「これはまったく神の罰だ。あんまり近頃の人間が軽佻浮薄に流れたからだ」(今回もトチジが同じようなこと言った)
 柳田は反論。
「本所深川あたりの狭苦しい町裏に住んで、被服廠に遁げ込んで一命を助かろうとした者の大部分は、むしろ平生から放縦な生活をなしえなかった人々ではないか。彼らが他の碌でもない市民に代って、この惨酷なる制裁を受けねばならぬ理由はどこにあるのか」
 柳田の弟子、今は東京にいた。本所深川あたりに建ちはじめたバラックを写真に撮り、スケッチした。今の農山村調査でのスケッチ記録は柳田の認めるもの。

 二人の実家は医者。著者は、師弟が互いに「社会を豊かにすることで庶民の生活の向上を目指す『経世済民』の思想」で結ばれていた、と想像する。
 今は、バラック調査から、商店デザイン業に。東京に活気が戻ると、街の風俗を克明に記録する「考現学」調査を開始する。このことで柳田から「破門された」と回顧している。
第1部 柳田国男 (1)『遠野物語』と三陸津波 (2)『二十五箇年後の旅』
第2部 今和次郎 (1)民家採集の旅 (2)バラックの発見、考現学の発明 (3)考現学以降 終章 二つの学問

 





 同新書、同時刊行書目。
 寒川旭『日本人はどんな大地震を経験してきたのか』
 三浦展藤村龍至『3・11後の建築と社会デザイン』
 小俣一平『新聞・テレビは信頼を取り戻せるか』
(平野)