週刊 奥の院 11.14

■ 『文藝別冊 追悼 小松左京』 河出書房新社 1200円+税
○ 小松左京アルバム 1931−2011 
○ 『日本沈没』創作メモ
○ 開高健への手紙 草稿
○ 著作集未収録 [講演]人間にとって文学とは何か 他エッセイ、対談
○ ロングインタビュー 秘書が見た小松左京 乙部順子
他、著名人の追悼エッセイ、対談など。

 桂米朝さんが語る「想い出」から。
 ラジオ番組で一緒に仕事をして、気心の知れた飲み友だち。
 

 私も古典芸能や文学に関しては少しばかり薀蓄を持ち合わせておりましたが、彼の知識の幅広さには驚くばかり! 古典・文学はもとより、天文学、地質学、物理学、人類学、民俗学……。皇室典範の話から、卑猥なお座敷唄まで、何でも来いです。お固い学者の集まりであればあるほど、嬉々として艶っぽい話を喋り出す人でした。
(『日本沈没』について)
 あのブームは「やっぱりSFや」ということで一件落着しましたが、ここに来て『日本沈没』が再び現実味を帯びてきました。
 小松つぁんはそれを放ったらかしにしませんでした。常に日本再生のことを考えていたように思います。『日本沈没』以降の著書は殆んどがその方策に費やされてきたと言っても過言ではありません。……
 先見の明を持っていた芸人のような文人――、それが小松左京やと思います。

■ 『仙台学 vol.13』  荒蝦夷 1300円+税
特集:赤坂憲雄「震災論」 
 赤坂憲雄、1953年生まれ、「東北学」提唱者。学習院大学教授、福島県立博物館館長、遠野市立遠野文化センター所長、東日本大震災復興構想会議委員。
 〈3.11〉以後の執筆したをまとめる。 
 東北の民俗知 今こそ復権
 広やかな記憶の場を
 大震災のあとに東北がはじまりの地となる
 フクシマはわたしの故郷である
 鎮魂と再生のために
 海のかなたより訪れ詩もの、汝の名は
 熊谷達也『いつかX橋で』解説
 被災地からの手紙
 福島、はじまりの場所へ
 福島を、自然エネルギー特区に 福島から未来を創りたい
 おまえ、オレの何が分かってるんだ、と呟く声がする
 他、全21編。
「東北の民俗知 今こそ復権」(読売新聞 3.23)より
 

 東京にいた。揺れた。何か、巨大なできごとが、どこかで起こっているのかもしれない、そんな不吉な予感がよぎった。……
 しだいに、被災地の消息が明らかになる。「壊滅」という言葉が踊る。やっとのことで生き延びた人びとのあくまで静謐な語りに、触れる。東北の人びとは黙って、何もかも引き受ける。東北の村々は地震津波、冷害やケガチ(飢饉)によってくりかえし壊滅しながら、あらたに村を起こし、様々な縁によってむすばれたコミュニティを再興してきたのである。……
 めまぐるしく場面が転換する。津波から原発へ。言葉を失っていた。やがて、いくつもの問いがあふれ出す。なぜ、またしても東北なのか。なぜ原発なのか。なぜ、東京の「負」を東北が背負わされるのか。……
 いまこそ東北ルネサンスについてかたらねばならない。ここでの復興とはしかし、元に戻すことではない。未知なる地平へと踏み出すことだ。東北から、新たな人と自然を繋ぐ世界観を創ることだ。そのためにこそ、人としての身の丈に合った暮らしの知恵や技を、民俗知として復権させねばならない。人智が制御しえぬものに未来を託すことはできない。……

 (表紙の写真、宮城県名取市閖上(ゆりあげ)から仙台市を望む。5.21)

(平野) 四谷書房さま ブログで『ほんまに』を紹介していただきありがとうございます。突然送りつけて「紹介せい」みたいですみません。私は執筆メンバーに原稿をお願いしただけで、実務はすべて「くとうてん」スタッフによるものです。ほとんど役立たずです。今後ともよろしくお願いします。