週刊 奥の院 11.13

■ 『仙台学 vol.13』  荒蝦夷 1300円+税

特集:赤坂憲雄「震災論」 
巻頭対談 佐野眞一×和合亮一 地震津波原発事故 言葉で何ができるか

 まず、佐野・和合対談から。
 9.18 仙台文学館でのトークイベントの模様。
【佐野】 ……震災当初からつくづく考えさせられたのは、言葉に力がない、逆にいえばもっともらしい言葉ばかりが蔓延していることでした。言葉の力が失われる時代は決していい時代ではない、いい状況ではない。そんなときに和合さんの詩集『詩の礫』を読みました。「放射能が降っています。静かな夜です。」という句を読んで、震えがきました。言葉に力がある、そう思いました。僕流にいえば大文字の言葉ではなく、和合さんのように小さいけれどはっきり呟く言葉がいま大事だと思います。
【和合】 (3.16に避難所から家に帰り、家族を山形に避難させ、福島にひとり暮らす) 「明日は何が起きるんだろう。原発が大爆発して、この地上が大きく変わってしまうんじゃないか」と、そういう気持ちでいっぱいになりました。いまこの夜の気持ちを言葉にしたいと思いました。言葉に残さなければ、自分の生きてきた証がなくなってしまうような、そんな気がしたんです。……(ブログもツイッターもしていなかった)この気持ちをすぐに誰かに伝えたいとするならば、ツイッターしかない、と。

最初 「震災に遭いました。避難所に居ましたが、落ち着いたので、仕事をするために戻りました。……」
二つ目 「本日で被災六日目になります。物の見方や考え方が変わりました。」
三つ目 「行き着くところは涙しかありません。私は作品を修羅のように書きたいと思います。」

四つ目 放射能が降っています。静かな夜です。」……言葉が溢れてきて、ツイッターに夢中で 二時間ほど詩を打ち込んで発信した。これが始まりです。
【佐野】 危機に瀕した人間のさいごの拠りどころは、やっぱり言葉なんですよ。
【和合】 言葉だけしかなかった。言葉にすがり、言葉を抱きしめるようにして、詩を書き続けたような気がします。日本語に救われたのかもしれません。

 話は原発、沖縄、東電OL事件、司法の危機、そして原発事故に戻る。ノンフィクションと詩、表現方法はちがうが、事実を積み重ねて想像力を飛ばす(佐野)と、見えないものを一生懸命見つめる(和合)、「目に見えない繋がり」を追求するのは同じ。
【佐野】 ……ジャーナリストであれ詩人であれ、言葉を扱う職業の人間は自分の仕事に対して誇りを持つと同時に危機意識を持って時代に臨まなくてはならない……。
【和合】 言葉を扱う人間の一人としてこの時代にどう立ち向かうのか、これからも考え続けたいと思います。

 続く。
(平野) 『ほんまに』読者からお便りをいただいています。休刊を残念がってくださる方も。ありがとうございます。私共下っ端はやる気満々なのですが。
 紹介する本が溜まってしまって、追いつかない。