週刊 奥の院 11.12

■ 菊池明郎 『営業と経営から見た筑摩書房』 インタビュー・構成 小田光雄
論創社 
1600円+税
 出版人に聞く(7)、今回は筑摩の会長さん。71年入社、78年会社更生法申請、更生開始決定後、営業課長に就任。
新人時代、巡回販売や同行販売など出張販売に駆り出された。これが大きな売り上げを占めていた。その一方、筑摩は書店営業をこまめにしていなかった。編集部が初版部数や価格を決めていて、書店での売れ行き動向や重版のための調査もしていなかった。当時買切制だった。お金は回収できていた。本書で「ゆるい買切」と言っているが、交渉すれば返品できた。それでも返品率が上がり、いわゆる自転車操業で、新刊をどんどん出し、売れない過去の本を焼き直しで出す。営業会議は資金繰りのためのものだったとか。
会社更生法申請。負債総額53億円、社員約4分の1リストラ、給料35%カット。それでも売り上げは落ちず、書店の支援で既刊本が売れ、全集があったおかげで急場をしのげた。
78年の「ちくまブックス」を皮切りに、PR誌「ちくま」、児童書「ちくま少年図書館」「ちくま文庫」「ちくまプリマーブックス」など、新企画では「ちくま」とひらがなにした。古い社員から反発もあった。85年の「文庫」では「汚らわしい仕事、安直な本は作るべきではない、筑摩はそんな出版社ではないはず」という意見があった。92年の「筑摩叢書」絶版時にも色々な悪評が立ったそうだ。
しかしかつての「筑摩」から「ちくま」への移行は戦後日本社会の変化に対応するものだし、それこそこのチェンジは新しい「ちくま」の文化性、企業性、採算性を確立し、維持するためには必然的な選択だったと思います。
99年6月、菊池さんは社長に就任。筑摩書房初の営業部出身社長。
出版の歴史は編集中心の歴史で、それは出版の一部でしかない。筑摩の社史『筑摩書房の三十年』(筑摩選書)は創業者と編集出版史だったが、『筑摩書房それからの四十年』(同)は営業と経営の視点が導入されていて、小田さんはそれを読んで、本書のタイトルを決めた。
目次
第1部 消費税問題 コミックと筑摩 筑摩と高利貸し 古田晃の母性イメージ 教科書と筑摩 書店の筑摩支援 営業部の存在 他
第2部 入社に至る事情 六〇年代の営業部 少年社員と近代出版史 巡回販売時代 書店同行販売 営業部と編集部 会社更生法申請 他
第3部 月販市場の凋落 スリップ回収による単品分析と管理 倉庫にいた田中達治 組合問題 「ちくま」と新しい企画 広告戦略と『老人力』 『金持ち父さん〜』 他
第4部 社長就任とミリオンセラー 『思考の整理学』のベストセラー化 『明治文学全集』、『世界文学大系』、未刊の『大正文学全集』 蔵前への移転と自社ビル 田中達治 東日本大震災後の出版業界 時限再販 他
 
 菊池さんは、6月に被災地の書店・図書館を訪問し、元気づけようという思いが、逆に勇気づけられて元気をもらったと語る。
 現地を見て、たいへんな経験をした方々のお話を直接聞くことによって、今後どのように復興に力をお貸しし、行動すればいいのか少し分かったような気がしました。
 私が仕事をする際のモットーは「現場を知る」ことです。分からなくなったら現場に行き、しっかりと現場を見ることです。会社の経営にたずさわるようになってからも、この考え方を変えずに突っ走ってきて正解だったと思います。

■ 『ほんまに』第14号 
レギュラーながら、あんまり推奨できない有象無象。名前を記すのも憚ります。
○ 一冊でコラボ (平)文 (イシ)画 荒木経惟『天才アラーキー 写真の愛・情』
○ アカヘル読書日記 (北) 読書日記を装った“新婚日記”。
○ ひらの、スケベ本を読む 『珍日本超老伝』 
○ 作家もすなるアナログ棚卸 (福) 郄田郁さんのイラスト
○ 電車店長 うみふみお F店長酔っ払い4コマまんが

 こんなのも、もう読めなくなると思うと、寂しい。

 多くの人が貴重なスペース・媒体で『ほんまに』を紹介してくださっています。ありがとうございます。

 おまけ その1 「女子の古本市」 運営者3名似顔絵拡大版 http://lockerz.com/s/155060443

 おまけ その2 S藤J子描くところの私 神戸から仙台になんかちょっかい出してる奴。

■ 碧野圭さん、ブログ更新。福島のこと。 http://aonokei.cocolog-nifty.com/syoten/2011/11/post-1b6f.html
(平野)