月曜朝礼 新刊紹介

【文芸】 クマキ
■ アメリー・ノートン  横田るみ子訳
『チューブな形而上学』 作品社 1600円+税
 フランス・ベルギーで活躍する作家。「ヨーロッパで最も人気のある小説家」。パリでは彼女のポスターがあちこちに貼り出され、テレビ・雑誌でも人気とか。写真、確かに映画スターのよう。
 アメリーは1967年駐日ベルギー領事の娘として神戸で生まれ、5歳まで日本で生活。父の転勤でアジア各地・アメリカを経て、17歳の時帰国。23歳で再来日し商社に1年勤務。92年『殺人者の健康法』(邦訳、文藝春秋、96年)でフランス文壇デビュー。ベストセラー作家になる。
 本書は2000年発表。3歳の誕生日を迎えるまでを作品化。
帯) アメリー・ノートンの原点は、日本にあった。自分を日本人だと信じていたアメリーの幼い青い目に映った、日本の言葉、水、季節、時間、家政婦さん、庭での幸せな時間、池の鯉……。それはどれも魅力的であり、面白おかしく、奇妙奇天烈なものばかりだった。そして……。
 最初のページ。 わたし、呑み込んではまた空(から)になるチューブなの。
 食物、摂取、消化、排泄……。 神はこれ以上ないくらい単純に取り入れるためと出すためだけに、体の適切な部分に穴を開けていただけだった。 
 日本でも、人間は糞袋とか申します。
 彼女は生まれてから泣いたこともなく動いたことも音をたてたこともない。医者は《病的な無気力》と言う。「植物」と。
 ある普通の日、家中にものすごい叫び声。彼女は「ベビーベッドに座って普通の二歳児がするように泣きわめいていた」。両親にとっては歴史的な瞬間だった。しかし、彼女は常に怒っていて、叫んでいる。《病的な短気》になっていた。ベルギーから祖母が駆けつけ彼女の世話をする。祖母がくれるホワイトチョコレートで食欲が満たされる。
 そして、日本人家政婦ニシオカさん登場。
 彼女はその存在自体が善であり、わたしを存分に甘やかしてくれた。
 ニシオカさんは日本語しか話さなかったけれど、わたしは彼女の言うことをすべて理解できた。
 大好きなニシオカさんは優しい声でわたしに話をしてくれた。彼女はいちばんわたしに声をかけてくれるのだ。

 アメリーが発した言葉、最初は「パパ」「ママ」。しばらくして「掃除機」「ジュリエット」(姉の名)、5番目が「ニシオカさん」。そして、6番目はニシオカさんが話してくれた彼女の妹のこと、「死」だった。
 
 アメリーは自分の名を「雨理」と書き、雨のセオリーと説明する。作品のなかで日本への愛情を表現する。
 他の邦訳作品。『午後四時の男』(文藝春秋、98年)、『畏れ慄いて』(作品社、2000年)、『幽閉』(中央公論新社、04年)、『愛執』(中央公論新社、05年)。

【雑誌】 アカヘル
■ 『modern juice 8』 特集:私の住処
 編集 近代ナリコ(こだい) 発行 黒沢書店 
  800円+税 
 不定期刊行、今回5年ぶり。家、部屋だけではなく、環境とかコミュニティーのことも取り上げる。
「近代(きんだい)女子の生活と表現」をテーマに、手芸・料理・お稽古事などを特集。近代(こだい)さんの著書、『ふたりの本棚』『インテリア・オブ・ミー』『本と女の子』『京おんなモダン・ストーリーズ』など多数。“古本女子”。
 もくじ
 奈良の間借り暮らし  鈴木遥
 お布団どこに敷く?  浅生ハルミン
 インタビュー 近藤祐 「出口をさがして――集合住宅、ルームシェア、自己所有からの脱出」
 わたしの住まい遍歴  堀部篤史
 わたしの巣  市川慎子
 崖の上より  近代ナリコ
 ……
 関連本の紹介は新刊も古本も。『中流住宅の模範設計』(主婦之友社、昭和2年)他。
http://modernjuice.blog79.fc2.com/blog-entry-27.html
【芸能】 アカヘル
 仕入責任者が彼。
 児童書専門店「メリーゴーランド」が出版。
■ 谷川俊太郎詩集 ところで』  1000円+税
■ 皆川明・トランプ・抄』 服飾デザイナーの作品集 1200円+税
 どちらもカード式、豆本
 書影は後日。アップしました。







【海事】 ゴット
■ 幡野保裕 『リピート率7割の「飛鳥クルーズ」最高級のおもてなし』 かんき出版 1400円+税
 豪華客船「飛鳥」の旅と船内サービスを紹介。著者は同船第5代船長(95〜03)。国内外225港に入港、4回の世界一周クルーズを指揮。現在はクルーズ・クラブ「アスカクラブ」会長。

【児童】

 「朝日新聞」11.6書評欄でも紹介。しかも取り扱い書店として、銀座教文館と並んで【海】の名が。 
■ エドワード・アーディゾーニ 『チムとゆうかんなせんちょうさん』 完全復刻版(限定1000部) こぐま社 20000円+税
 化粧箱入り、本文78ページ、英語表記。小冊子、日本語・英語併記、48ページ。
 エドワード(1900〜79)はイギリスの画家・絵本作家。本書は世界に普及していて、日本でも福音館が1955年に出版している。しかし、それらは絵を描き直して小型にした第2版。このたび、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館に保管されていた初版(1936年)の原画をこぐま社が世界で初めて復刻。印刷されていなかった幻の4場面を発見したのは、同社創立者の佐藤英和さん。
 ストーリー。船乗りになりたいチムは、船乗りだったおじさんに船のことを教わる。ある日おじさんと沖の船までボートで行き、そのまま乗り込んでしまう。船長に見つかって船で働く。つらい仕事に耐えみんなの信頼を得る。しかし、嵐で船は難破、チムと船長だけが取り残されてしまう。……

(平野)