週刊 奥の院 11.7

■ 山田稔 『日本の小説を読む』 編集グループ〈SURE〉 2200円+税
「〈SURE〉の荷物が届いています」とアカヘルが嬉しそうに言ってきました。はよ開けろ、という催促です。待ちわびていたようです。
 著者は1930年福岡県出身、京大でフランス文学。同人文科学研究所を経て、教養部でフランス語を教える。94年退官。
 本書は、人文研時代に所員たちで始めた読書会の模様を伝えるもの。当時の思い出と、会報から討論の記録を掲載する。
 会のきっかけは、当時のベストセラー五味川純平『人間の条件』。所内のあちこちで議論。桑原武夫が、なぜこの小説がこれほど読まれるのかをみんなで討論しようと提案。第1回の報告者は井上清。以後月1回集まることになる。所員だけではなく外部からも加わってくる。
 私が名前を知っている人だけでも、飯沼二郎、加藤秀俊多田道太郎。外部の人では、梅原猛高橋和巳杉本秀太郎松田道雄ら。ほとんどが大学教師で教え子を連れてくる人もいる。学生は卒業で去るが、しばらくすると子育てを終えたりして復帰する人もいる。遠い実家や転居先からはるばる参加する人もいる。
 会は37年続き、会報は400号に達した。予約購読者に郵送し、残りは友人や東京の作家・編集者にも送った。会の批評を面白がる人、出席をしたかったという人もいる。もちろん無視の人も。
 会で取り上げた本の一部。
井上光晴『死者の時』  深沢七郎『風流夢譚』  高見順『いやな感じ』  太宰治走れメロス』  織田作之助『六白金星』  夏目漱石『それから』 金鶴永『凍える国』……。
 会は、 「教養を目的とする読書会、あるいは何らかの主義主張にそった文学集団でもなく、仲間うちの遊びに近いものにすぎなかった。」
 書影は後日。アップしました。


 




■ 『ほんまに』 第14号 じっくり読むとあちこち校正ミス。私が発見しただけでも3ヵ所。目次、自分の名前がちごうてるやん! 
 昨日の続き。
 ○ 神戸と清盛  武家政権のパイオニア 平清盛略伝  井上嘉子  来年の大河ドラマで数カ月前から神戸は盛り上がっています。清盛像も完成。先日新しい平家遺跡も発掘されました。井上さんは、平家公達の逸話を集めた「平家公達草紙」を現代語訳した『五常楽』を出版。
○ 本のある街角から  牛津太郎  これまではロンドンからの通信でした。今回は昨年亡くなった黒岩比佐子さんとの交遊を語ります。彼女が作家としてひとり立ちする過程をよく知る氏の哀惜の念が……。
○ 書店員オススメ本 「言葉」は可能か?  花本武
吉祥寺のブックス・ルーエの花本さん。田中克彦エスペラント』(岩波新書)と、小林エリカ『親愛なるキティーたちへ』(リトル・モア)を紹介。
 続く。
 大切なお知らせ。『ほんまに』取り扱い書店。 
 神戸 文進堂書店 トンカ書店
 西宮 ジュンク堂西宮店
 名古屋 リブロ名古屋店
 東京 東京堂書店 模索舎 ジュンク堂新宿店 リブロ池袋本店 古書ほうろう
 今回東北の書店さんにも交渉中です。
(平野)