週刊 奥の院 10.19
岩波現代文庫でぇい! 何をいきっているのか、現代文庫やで〜!
■ 隅谷三喜男 『賀川豊彦』 1020円+税
元版は1966年日本基督教団出版局、95年岩波同時ライブラリー。
1909年12月24日、神戸神学校の学生・賀川は神戸葺合の貧民窟に引っ越して来る。荷車にふとんと少しの衣類、書物。5畳敷きだが古畳3枚しか買えなかった。前の住人は喧嘩で死亡、幽霊が出るという家。借り手がなく家賃をまけてもらう。賀川は肺を患っていて、前年の大半は療養所生活。
どうせ、近い中に死ぬのだから――一年か二年か、長く生きて三年位の中には肺で死ぬのだから、死ぬまでありったけの勇気をもって、もっとも重い生活を送るのだと決心した。(『死線を越えて』)
隅谷(1916〜2003)は労働経済学者。本書では賀川の労働運動、農民運動、協同組合運動を中心に論じる。
■ 富岡多惠子 『湖の南 大津事件異聞』 860円+税
07年新潮社。著者は作家・詩人、歴史評伝の著作も。
題材は大津事件。1891年5月11日、来日中のロシア皇太子を警備の警官・津田三蔵が襲った。裁判で日本政府は死刑の圧力をかけるが、法に基づいて裁かれ司法の独立を守ったという評価がなされる事件。
これまで、事件については司法権の問題という観点か、当時の日露関係から論じることが主。文学作品でも、政府の狼狽ぶり、津田を凶徒と記すものが多い。
解説(成田龍一)より。
……富岡さんは、こうした「凶行」から離れて、津田三蔵に着目する。事件を引き起こすことによって、たまたまひとりの青年にかかわる史料が集められたが、その史料によって、(満年齢で)一三歳で明治維新、一六歳で廃藩置県、そして二〇歳代で西南戦争を体験するという、「時代の変革期がその青春期と重なっている」ひとりの青年の姿を浮き上がらせる。……
富岡さんが、津田が西南戦争の体験者であることに力点を置くのは、あらたに発見された津田の書簡の解読を通してである。
そこを手がかりに、富岡さんは、あらためて津田三蔵を語りはじめる。……
■ リービ英雄 『日本語を書く部屋』 860円+税
01年岩波書店。著者は1950年アメリカ生まれ。少年時代を台湾、香港で過ごし、67年来日。日米を往還して、プリンストン大学大学院修了、日本文学教授。40歳直前から日本に定住し、日本語で作家活動。表題エッセイは96年発表。
「海外」の部屋を引き払って、ようやく、自分自身の日本語を書く部屋に引っ越すことができた。……
島国の大都会の真只中にある古い部屋は、何よりも日本語を書く部屋なのである。
著者にとって「海外」とは、母国アメリカであり、少年時代を過ごした台湾からみた中国を指す。
■ 中村明 『笑いのセンス 日本語レトリックの発想と表現』 1240円+税
02年岩波書店。著者は早稲田大学名誉教授。
人から笑われるのはつらいが、人を笑わせるのは快感だ。みずから笑うのはさらにこたえられない気分だ。しかし、笑いにはセンスが要る。他人はいくら滑稽に思おうと、自分の感覚や波長が合わないと笑えない。……
何を笑うかでセンスがわかる。問われているのはまるごと人間なのだ。
1 笑いをめぐる理論 人間と笑い、笑いの効用、笑い声の種類 ……
2 笑いのレトリック 笑いをつくりだす言語表現の働き ……
3 笑いの文学史 狂歌、川柳、小咄、落語、漱石、百輭、井上ひさし ……
4 ユーモアの文体論 高田保、木山捷平、尾崎一雄、井伏鱒二 ……
(平野)
いきっている理由? 今日(18日)もいいことがあったのだよ〜ん。
こちら。http://twitpic.com/721no0 http://twitpic.com/721puc
うれしい、たのしい。次回会える日まで生きたいと思います。
呑気にニヤニヤしていたら、締め切りの原稿を忘れていて、督促。もちろん「ヤッツケ仕事」。ああ、おっさん、アホか〜!