週刊 奥の院 10.9
■ 戸田学 『随筆 上方落語の四天王 松鶴・米朝・文枝・春団治』 岩波書店 2400円+税
昭和二十二年、上方落語の世界へ相前後して入門した若手落語家がいた。のち六代目笑福亭松鶴、桂米朝、五代目桂文枝、三代目桂春団治である。
彼らが入門した数年後には、それまでの大看板であった五代目笑福亭松鶴、立花家花橘、四代目桂米団治、三代目桂春団治らが立て続けに亡くなった。
上方落語危機の時代だった。彼ら若手が助け合い競い合って芸を磨き、古典落語を発掘、再生し、さらに進化させた。
……
これは奇跡といっていい。
奇跡はもう一つあった。数少ない上方落語の継承者ではあったが、のちに(上方落語四天王〉と称される若手落語家には、それぞれに色合いと芸風の違う名人気質が備わっていた。やがて、彼らが牽引役となって、昭和期始まって以来の上方落語の隆盛期を迎え、後進の入門志願者が相次ぐことになる。結局、斯界が継承発展するためには、少人数であっても自らの芸に対する向上心、それに哲学と覚悟をもった継承者があればいいのである。
第一章 米朝落語の考察
第二章 松鶴の話術――戦災と稚気
第三章 文枝の落語――五代目松鶴からの進化
第四章 春団治(さんだいめ)の世界――舞踊と落語の融合
第五章 大阪の古今亭志ん朝
著者は1963年堺市生まれ、作家。著書に、『桂米朝集成』『いとしこいし 漫才の世界』『六代目笑福亭松鶴話』など。
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(平野)