週刊 奥の院 9・14
■ 『花森安治戯文集2 [風俗時評]ほか』 LLPブックエンド 2500円+税
解説 津野海太郎
解説による。『風俗時評』は1953(昭和28)年東洋経済新報社から刊行。もとはラジオ東京(現在TBSラジオ)で花森が週1回話したもの。
「黒の流行」「赤色部隊横行す」「靴が歩いている」「暮しの句読点」「サラリーマンの制服」「着たきり雀の男たち」「男のカバン女のバッグ」……
当時花森は、朝日新聞の常連執筆者、『暮しの手帖』主宰者、ベストセラー本の装幀者として有名だった。
人気の理由はかれの毒舌の力もですが、それ以上になかば伝説化されつつあった「女装」の効果が大きかったようです。おかっぱ風の髪にチリチリパーマ、ペラペラのブラウス、ときにルパシカ。なにやらスカートのごときものを身にまとい、首もとに趣味のいいスカーフをひと巻き。顔だけ見るとおっかない「鬼瓦」(中学のころからのあだ名)のごとくだが……。
「女装」やら「毒舌」など、「コッケイさの印象が広く定着していた」。
彼の女装=異装は、前衛・反逆の系譜でしょう。現在の芸能人の“異装・毒舌”と同列にはできないだろうけど。
さて、「時評」は流行やファッションを取り上げながら、文字通り「時評」。
一体サラリーマンというのには、制服がありまして、昨今は女の子の制服が非常に問題になっておりますけれども、この男の子のほうの制服は余り問題になっていない。(略)何も背広を着て悪いということはありませんけれども、何も又、それだから背広を着なくとも悪いということもないと思うのです。(略)早い話が、ジャンパアを来て歩いておりますと、世間の人は、余りこれはインテリだとは思わない。たぶん思われないだろうと、本人が思うわけです。間抜け面をしたような男でも、三つ揃いの背広を着まして……どうもあれはインテリらしいということになる。しかし、インテリらしく思われる、見られることが、どれだけの値打ちがあるか、インテリらしく思われたって、本人が間抜けだったらどうにもならない。
他に、[服装時評][衣裳読本]、中島淳一との往復書簡など。
「暮しの手帖社」は、もとは「衣裳研究所」。雑誌『スタイル・ブック』を出版していた。
花森の生誕百年を記念して、10月ブックフェア。担当はアカヘルです。
私は、“福島フェア(仮)”10.1〜11.14 です。しつこい!
第11回海文堂の古本市 9.23(金)〜10.10(月) 但し9.28(水)は棚卸しのため休業いたします。
案内ハガキが届きました。(平野)