週刊 奥の院 9.3
■ 山折哲雄・赤坂憲雄 『反欲望の時代へ 大震災の惨禍を越えて』
発行:東海教育研究所 発売:東海大学出版会 1900円+税
第1部、4月28日京都での対談。
第1章 被災地とメディアと東京
第2章 震災の名称を変えた愚かさ
第3章 震災をめぐる日本の「知」
第4章 学ぶべきもの、進むべき道
第5章 揺れる日本人のメンタリティ
第6章 終末的な風景が生まれる思想
第7章 原発禍を越える「希望」とは
第2部、対談で両氏が触れた文学作品・随筆を収録する。
寺田寅彦 『津浪と人間』他
岡本太郎 『ちゅらかさの伝統』
岡潔 『対話 人間の連続』より
和辻哲郎 『風土 人間学的考察』より
柳田國男、宮澤賢治……。
山折さんは、東北大学卒。4月中旬被災地をまわった。
……一面の破壊と瓦礫の跡を見ての第一印象は、ここは地獄だ、という実感でした。幻想を伴った中世的な地獄ではなく、現代的なリアリティを持つ地獄が眼前に存在していた。賽の河原とはこのような世界だろうと実感しました。……
赤坂さんは「東北学」提唱者。ことしから福島県立博物館館長。福島県に入ったのは4月21日で、警戒区域指定で立ち入り禁止になる前日。一時帰宅の人たちの車が激しく行き交う日だった。
……(南相馬市から南下、原発まで15キロ地点)自衛隊によってひととおり遺体の捜索はされていたのですが、二十キロ圏内なので瓦礫の撤去がまったくできていない。津波にやられて以来、まったく手つかずで四十日間も放置されていた。……凍りついた風景とでもいえばいいのでしょうか。
報道の問題で、東北人は忍耐強いとか我慢強いなどの大合唱。両氏激怒。山折さんは、吉幾三の『俺ら東京さ行ぐだ』について語る。
(赤)あの歌、僕も大好きなんです。したたかな東北人の歌です。「東京で銭コア貯めで東京で牛飼うだ」ですからね。
(山)震災後の世の中の気分としては、東北といえば千昌夫の『北国の春』なんですよ。望郷の抒情歌で、いわば出稼ぎ者の視点ですね。植民地としての構図が背景にある。
(赤)演歌に限らず、ほとんどの東北のイメージは植民地的な抒情歌に収斂されています。東京に原発の電気を送り、食糧を送り、出稼ぎ労働者を送り、女を送る。そして、東京で望郷を歌う。
「希望」はあるのか?
赤松さん。原発事故によって「三陸の海は絶対よみがえる」という物語の完結が許されない、立ちすくんだ状態。だが、前向きに立ち向かうべき。福島+自然エネルギー転換拠点構想を語る。
(山)復興でも再生でもかまわないけれど、まずは希望がなければならない。希望がなければ、福島の人たち、東北の人たち、あるいは日本人全体もみんな動き出せません。
神話知の名前として「ミロクプロジェクト」を提案。
本書編集に仙台の「荒蝦夷」が参加。
(平野) この対談のあと、赤坂さんが「荒」編集者とともにわざわざ神戸まで来てくださった。
『IN THE CITY』 第3号( ビームス 1000円+税 )発売
巻頭インタビュー 小西康陽 「ミュージシャンは連帯すべきじゃない」
海文堂HP更新、ですが私の「本屋の眼」だけがまだです。なんでか?
http://www.kaibundo.co.jp/index.html