週刊 奥の院 8.20

■ 高山宏 『新人文感覚1 風神の袋』 羽鳥書店 12000円+税
 分厚いというより、ぶっとい。A5版上製、904ページ(うち索引45ページ)、図版700点。
 高山さんは、1947年岩手県生まれ。東京都立大学首都大学から、現在明治大学国際日本学部教授。専門は英文学。その研究・執筆分野は多岐・厖大。博覧強記という表現でいいのでしょうか、文学はもちろん、思想、美術、漫画、江戸、演劇、映画……、観相学にポルノ……。ちょいと古いですが、こちらを。
http://www.kousakusha.co.jp/ISSUE/takayama.html
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0442.html

 本シリーズ、
「大きな袋の口をあけて次々と問いを吹きださせる」風神篇と、
「それを片端からいかにも賑やかに受けとめる」雷神篇の2巻。『雷神の撥』は今秋刊行予定。
http://www.hatorishoten.co.jp/74_96.html
目次
1  ホモ・アンブランス(歩くヒト)になる――歴史を「歩き」直す方法
2  見ることに洋の東西はない――視覚文化論実践篇
3  見えるものはこんなにも楽しい(?)――表象論基礎篇
4  庭のように世界を旅する――ピクチャレスク遊学篇
5  家が「うち」と呼ばれるとき――幻想文学入門篇
6  私は人文がしめ殺されるのをこの目で見た

〈風神口上〉より。
 

十五年ほどの間にまさしく筆も折れよと書きまくり、書きとばしていったものから、何人もの目利きの編集者がこれは何とかひとつにまとめられそうと言って十冊余りの単行本にとっていった残りのものを、すべてといってよいくらいどっと集めた奇書、『ブック・カーニヴァル』が想像通り書評者泣かせの厖大な一巻となって読書界(の一部)をさわがせたのが一九九五年のことだから、もはや十五年がたったということなのである。……
 星移り時替って次の十五年、人間関係は一変した。(略、いろいろあって、家庭崩壊、新家庭、お子たちの学費工面など)百年に一度とか言われた平成大不況の中で人文書頭打ち。……よくも稼ぎ抜いたと、どこかで聞いた台詞だが自分で自分を(少し)褒めてあげたい。……

 どこまで真実か、我々が関知することではないですが、ご本人と編集者の努力によって本書が出現したことを、読書業界は喜びましょう。
(平野)