週刊 奥の院 8・4
■ 鶴見俊輔 『象の消えた動物園 同時代批評』 編集工房ノア 2500円+税
カバーの絵は須田剋太。
「須田剋太の面影」より。
雑誌「朝鮮人」に長い間無料で表紙を描いてもらっていた。お礼は、食事招待。飯沼二郎、岡部伊都子、鶴見夫妻同席。
須田は、自分の暮らしの中に金銭とかかわりのない部分があることを望んで雑誌の発行に加わった。そして、会食のたびに皆に絵をプレゼントした。
「須田さんは、この日本で生きるひとりの仙人だった」
ほか、書評、追悼文、九条の会のことなど。
あとがきより。
自然の中にあらわれる信号を読み取る。それが、もうろくの達人だろう。
同時代人から信号をおくられて、それを読みとく。それが、私には、もうろくのために、むずかしくなっている。
この本には、どうやら、それができた(と自分では思っている)例をあつめた。
失敗として、10年前、英語の達者な村上春樹に原書を勧めたエピソードが語られている。本書の書名、彼の短篇『象の消滅』から。
私は、同時代からはなれたくらしをしている。本を次から次へ読むわけではない。しかし、同時代の日本に住んでいるので、いくつかの信号を受けとる。
ノアのPR誌『海鳴り』23号、あと少しです。お早めに。
(平野)