週刊 奥の院 7.3

■ 上林暁傑作小説集 星を撒いた街』(夏葉社)

 少しずつ読んでいます。
私小説」は文学界で評価されないらしい。でも、芥川賞の西村さんの作品が売れて、「私小説」が注目されてきました。
 上林作品。「花の精」は前に紹介ずみ。今回「和日庵」(わびあん)
 主役は青森県出身の歌人・鳴海要吉(1883〜1959)。明治37年島崎藤村が「破戒」出版費用を捻出するため函館に夫人の実家を訪ねる途中、青森で鳴海と秋田雨雀が待っていた。その後、鳴海は島崎の初期の文章を集めた「若菜集以前」を編集している。田山花袋柳田泉棟方志功とも関わりの深い人物。その晩年、上林はご近所付き合いをした。作中、鳴海が作ったイロハ四十八文字の歌が紹介される。

 ワレラ オチヰテ イソシメハ 
 サケナンムネ ノ ヤスクアル 
 コヨヒ タマ キエ ホロフトモ 
 ヲカヘニ ウセヌ ユリエミツ

 吾ら沈着て励めば
 裂けなん胸の安泰くある
 今宵精魂消え滅ぶとも
 岡辺に永劫百合花咲みつ

 この作品、推敲を重ね、完成に50年を費やした。

http://natsuhasha.com/
(平野)碧野圭さんのブログ「めざせ! 書店訪問100店舗」更新。No.107「さわや書店本店」(盛岡)。被害軽微で3月13日に営業再開できたそうです。
 http://aonokei.cocolog-nifty.com/syoten/2011/07/no107-9ccf.html