週刊 奥の院 6・30

■ 内田樹 『最終講義』 技術評論社 1580円+税
 神戸女学院大学を退職。1月22日の「最終講義」はじめ全6編の講演記録。
 

 正直申し上げて、着任当時は、たぶん定年まではいられないだろうと思っていました。きっと何か問題を起こして、始末書とか譴責とか減給とか懲戒とか、そういうことがいつかあるんだろうなと漠然と思っておりました。いちばん気がかりだったのは、傷害事件を起こすことでした。

 東京では時々ケンカ騒ぎを……、さて、先生どうしたか?
(武道の師の教えに従い)
「用事のないところには出かけない」
「人通りのあるところを歩かない」
 女学院での21年間で「すっかり人格が温和に」。
「私そのものが神戸女学院大学の教育のひとつの成果」とおっしゃる。


“生き馬の目を抜くせわしさから秘密の花園の穏やかさへ”
“これから行われるであろう「よきこと」を信じて”
“ヴォーリーズの建物は生き物だった”
市場原理主義者たちには理解できないこと”
“自らの手でドアノブを回したものに贈り物は届けられる”
“「存在しないもの」からのシグナルを聴き取る”
……
 良き先輩・同僚教員、学院のキリスト教精神、建物の思想の素晴らしさ、文学研究の意義を伝えて、講義を終えられた。
 【他の講演】
「日本の人文科学に明日はあるか(あるといいけど)」 2011.1 京大大学院  
「日本はこれからどうなるのか? ――“右肩下がり社会”の明日」 2010.6 神戸女学院  
「ミッションスクールのミッション」 2010.10 大谷大学
「教育に等価交換はいらない」 2008.1 守口市職員組合
「日本人はなぜユダヤ人に関心をもつのか」 2010.5 日本ユダヤ学会

 出版社は名前のとおり、コンピュータ関連はじめ理系中心だが、ビジネス書、実用書などジャンルを拡大中。
 このたび“生きる技術! 叢書”創刊。同時3点。 釈徹宗『キッパリ生きる! 仏教生活』  小川仁志『ご近所の公共哲学』 各1580円+税
(平野)