週刊 奥の院 6.20

■ 『こころ』 Vol.1 特集:漱石現代日本の開化」一〇〇年
平凡社
 800円+税 隔月刊(偶数月) http://www.heibonsha.co.jp/kokoro/              
 特集から
 1911(明治44)年、夏目漱石は関西各地で朝日新聞主催の講演。和歌山での「現代日本の開化」は、批評家漱石の代表作。日本の開化=近代化を「問題」として初めて立ち上げた。「西洋の開化(一般の開化)」と「日本の開化」を区別し、日本の特殊性を指摘した。西洋は内発的で、日本は外発的。「外から無理押しに押され否応なしにその通りにしなければ立ち行かない有様」「皮相上滑りの開化」と。
(佐藤泉「百年目の漱石」)
 

 この年漱石44歳。前年夏、胃の不調で療養中に喀血したが奇跡的に回復。入院しながら「朝日」に執筆。1月「大逆事件」判決。2月「博士号問題」(漱石、不要と返上するも文部省保管)。4月森田草平連載小説騒動(平塚らいてうから撤回要求)。5月妻流産。6月から講演旅行。8月大阪で吐血、入院。9月痔手術、森田騒動から文芸欄廃止問題になり、池辺三山主筆退社。10月漱石辞表提出と撤回、五女突然死。翌年2月池辺死去。3月五女の死を反映した『彼岸過迄』第一章。4月石川啄木死去、『彼岸過迄』完成。
「こののちも朝日に連載をしつづけるが、一作書くたびに胃をひどく痛めて寝込むことを繰返し……」
 辞表問題でのエピソード。
妻「あなたなどが朝日新聞に居たって居なくったって同じじゃありませんか」
漱「仰せのごとくだ。何の為にもならない」
妻「ただの看板なのでしょう」
漱「看板にもならないさ」                (関川夏央漱石の明治四十四年」)

【連載】 半藤一利日露戦争史」 一海知義漢詩のある風景」 森まゆみ「『青鞜』の冒険」 他、柳田邦男、保阪正康杉山正明諸田玲子。将来の単行本ネタ満載。
【コラム】【エッセイ】堀江敏幸安野光雅きたやまおさむ萩尾望都……。
 池澤夏樹の連載も次号から。表紙カットは串田孫一『博物誌』より。
(平野)