週刊 奥の院 6.10

『本づくりの匠たち』 グラフィック社 2000円+税

 

 手にした一冊の本。これらができあがるまでに、どれだけ多くの人たちが関わっているのだろうか。
 著者、デザイナー、編集者、印刷会社。こうしたところはよく名前があがってくるところでしょう。でも実際には、縁の下の力持ちとして、本当に多くの人の手が動いているのです。
 そしてその手は、一朝一夕に鍛えられるものではなく、長い時間をかけて鍛錬してきたからこそ、精緻ですばらしい本ができあがるのだと思います。(編集部)

 
 ブックデザイナー・名久井直子さんが、本づくりに関わる現場を訪ねる。活字鋳造、活版印刷、インキ製造、製本、製函、古書修復、天金加工など12ヵ所。
 製本職人さんの言葉。
「機械製本を導入しているとはいえ、基本的な考え方は一貫しているんです。製本のスペシャリストとして、ひとつひとつの工程に徹底的にこだわっていくこと。それによって、品質の高いものを世に送り出していきたい」
「満足いくことなんて、なかなかない」「満足したら、そこで終わってしまう。つねに“もっと良いものを”という気持ち」
 欠陥商品という意味ではなく、あくまで職人の矜持。ベテランが謙虚な態度で丁寧な仕事をする。すべての職人さんの姿勢。
(平野)