週刊 奥の院 6.6


■ 北村薫 『飲めば都』 新潮社 1700円+税






 続いても新潮社。
 主人公は文芸編集女子・都。
 

 出版社に勤めている。年の頃なら、そう、当人は二十七八、三十でこぼこに見られるだろうと期待している。
 思っている、と書かないところに、彼女の理性が、いささかうかがえる――のではないだろうか。
 髪短く、鼻筋通り、すっきりとした顔立ちだ。そこで、自分という車のハンドルをキチンと握っている人物に、まあ見える。
 この《まあ》が、大抵の場合、忍び寄る恋のごとく曲者だ。

 入社して初めての飲み会で大先輩に痛め技。雑誌編集長との《赤いワイン伝説》。嫌われ者の自慢バッグにゲロゲロ……、モデルがいるんでしょうか、複数。次々繰り出される酒呑み失敗談。
 先輩女子「書ネエ」に「文ネエ」、同世代の《裸足で駆け出す愉快なサナエ》さん。女の酒呑みがレギュラー出演。
 女性がお酒飲んで“ほんのり桜色、可愛い!”なんてウソ! 男共、特に若者よ、騙されるな!
 こういう人たち、広い世間にはいっぱいいるんだろうなー、と我が身はさておき考えるのでありました。
 仕事の話も失恋も結婚もちゃんとあります。一生懸命の人には幸せになってほしい。
 それにしても、著者の芸域は広い、などと申せば怒られるか? シリーズ化、お願い!
(平野)