月曜朝礼 新刊紹介

【文芸クマキ】
■ ブレンダン・オキャロル 伊達淳 訳 『チズラーズ』 恵光社 1600円+税
 著者はアイルランドの作家・俳優・ラジオプロデューサー。2003年『マミー』(白水社、訳者も同じ)の続編。1970年代ダブリン、事故で夫を亡くしたアグネス(マミー)が露天商を営みながら7人の個性豊かな子どもたち(チズラーズ)を育てる家族物語。
 伊達さんは、翻訳家を志していた頃、アメリカを旅。小さな町の書店で“The Mammy”のカバーに一目惚れ、「迷わず購入し、バスの中で読み始め、泣き笑いで顔をぐしゃぐしゃにしながら、翻訳したいと強く思った」のです。昨年の『熊 人類との「共存」の歴史』(ベルント・ブルンナー、白水社)は記憶に新しいところ。71年和歌山県出身、芦屋在住。昨年12月「恵光社(えこうしゃ)」設立。
http://www.ekosha.com

【海事ゴット】
■ 木谷浩 『コインの水族館』 成山堂書店 3000円+税

 世界中のコインから魚が描かれているものを収集、1000点を超える。最古のものは2000年以上前のもの。現在150の国と地域で発行されているそう。日本にも3種類ある。
 著者は1947年鳥取県出身。76年から米州機構(OAS)をはじめ国際協力機関で活躍。東京海洋大学非常勤講師。コインの世界ではアメリカ貨幣協会(会員3万人)生涯会員。収集歴は30年以上。
 収集対象の【魚類】は、イカ・タコ(軟体動物)、鯨・イルカ(哺乳類)、ウミガメ、エビ・カニ甲殻類)、それに抽象化された魚類も含む。但し、貝、陸亀海獣は除外。

第1章 こんなにある! 魚のコイン  収集事始め、古代のコインと魚類、魚類の役割、コインの形状・材質・サイズ・種類、地域性 他
第2章 コインの水族館  コインに登場する最初の魚類、カジキ・マグロ、タラ・カレイ、イルカ、クジラ、サメ・エイ、観賞魚 他
第3章 コイン収集の世界  なんで魚? 何でコイン? 収集コインの取り扱い、コインの写真、本物と偽物 他
 
 なぜ魚が描かれているのか?
1.「単なる印」 国によっては複数の造幣局があり、それぞれのID(ミントマーク)として使う場合。鳥、蜂、斧やアルファベットも。デザイナーのサインもある。
2.準主体。 産業振興を描く時、魚で漁業・水産業を表わす。稲で農業、歯車で工業など。環境保護のシンボルとしても。
3.主体。水産資源・環境資源。アイスランドの名物「ガンギュイ」(一度埋めて腐らせ食用にする)。フィリピンでは83年当時世界最小の魚。アイルランドは北海のサケ、ジャマイカのザトウクジラなど。

 さて、日本の3種とは。
1.75年沖縄海洋博記念硬貨100円、イルカ。
2.戦後すぐ50銭銅貨、農鉱漁業振興を表現。稲、ツルハシ、魚(種類不明)。
3.2010年、地方自治法60周年記念硬貨1000円。名古屋城シャチホコ
 世界の多様な文化と海と人類の結びつき。
(平野)