週刊 奥の院 5.27

内澤旬子 『世界屠畜紀行』 角川文庫 857円+税
 2007年、解放出版社刊。
 

この本の底流に流れている問題意識は、みんな肉を食べているのに、なぜ動物を屠畜する人を差別し、忌避するのだろうかという、誰でも抱くごくあたりまえの疑問である。……この本は、動物でも植物でも生きているものを「殺し」て「食べる」以外に生きていくことができない人間のいわば「現在」について考える上でも大きなヒントを与えてくれる。(解説佐野眞一

 権力と屠畜、世界の屠畜事情、熟練の職人たち……、得意のイラストで屠畜の仕事の面白さを伝える。旬子サマ、ご自分で豚を飼い育て、屠畜場に出荷して食べるまでの取材もした。

「命を食べる/いただく」「食育」という言葉が、実によく使われるようになったにもかかわらず、その陰でいまだに遠ざけられ、忌み嫌われ、隠され、語られないものは、伝えようとしても伝わりきらないものは、何なのか。
私たちは一体何を食べているのか。 

 こうして、旬子サマのご本を紹介しているのに、私めの目と手は、同時刊行の、サタミシュウ『恋するおもちゃ』と酒井順子『ほのエロ記』の方へ行ってしまう。おっさん、アホかー。(平野)