週刊 奥の院

ねじめ正一 『母と息子の老いじたく』 中央公論新社 1500円+税
 

 三月十一日東日本大震災の日、私は母の家にいた。トイレから戻った母を車椅子から母愛用の椅子へちょうど移し替えたときにグラッときたのだ。いつもと違う。築四十年の木造の古い母の家は、左右に大きく揺れて、軋んでいる。

 体の不自由な母上。いっしょにテーブルの下にもぐるべきか、近所の公園に逃げるべきか、ねじめさんは決断できない。母上は、散らかったペンやノート、本、テレビのリモコンなどを、元に戻すべく整理整頓している。

「おふくろ、なんでこんな時に!」
「こういう緊急事態のときこそきちっとしないと気持ちがまっすぐに立たないんですよ」
 母にとって、目の前に散らかったペンやノートや本や、テレビのリモコンをあるべき場所に戻し、収めることが、母の老いじたくなのである。

 母上86歳、ねじめさん還暦。肝っ玉の坐り具合が違う。
婦人公論」連載「イキアタリ主義」。
『ほんまに』13号ニュース 
剪紙づくりkasparek(カシュパーレク)さんインタビュー「生生不息の願いを込めて」
「見えるものをきれいに切るのではなく、自分の心象風景を切り出せてこそ」
「ほんまに」を置いてくださる、商売度外視・博愛精神に満ちた本屋さん。
 東京堂書店 模索舎 ジュンク堂新宿店 リブロ池袋店 古書ほうろう リブロ名古屋店 ジュンク堂西宮店 文進堂書店(神戸市垂水)

4.23 森達也さんトーク&サイン会  こちらでご覧いただけますです。
 http://ustre.am/:XE9b
 被災地取材の話。『A3』のこと。大災害・大事件の後、人間の弱さから起こること。
(平野)