週刊 奥の院

築添正生(つきぞえまさみ)『いまそかりし昔』 りいぶる・とふん 2800円+税 装幀:林哲夫 写真:井上迅

 築添正生(1944−2010、金工家、生前大津在住)の遺稿集。文筆では、『1914年ヒコーキ野郎のフランス便り』(smus文庫)編著、『虚無思想研究』に「祖父奥村博史」連載のほか、新聞雑誌に寄稿。1冊にまとまるのは初めて。母方の祖父母が、奥村(画家)と平塚らいてう
1 いまそかりし昔
2 東の旅、南の旅
3 酒友録、書友録
4 ひょうたんとへちまとベースボール
5 祖母の庭
6 祖父奥村博史
7 無花果
 父、本、美術、音楽の思い出、祖父母のこと。
 野球がお好きで、扉の写真はユニホーム姿(95.9.3 広島県ドリームフィールド)。
 広島に草野球のための球場を造った人がいた。オープンの日(草野球にちなんで9.3)、詩人平出隆の「ファウルズ」と広島「ドリームチーム」の試合。カープOBも参加、築添は元プロとキャッチボール。「至福のひと時」を過ごす。
 パラパラめくっていると、119ページ「浅草の一夜」、年末の東京浅草のバーでの話。労働者風の男がテーブルにビール3杯・デンキブラン3杯・料理いっぱい並べている。いっぺんに大丈夫か? 浅草で飲んでいるのを京都の友人に自慢しようと電話するが留守。本を読みながら飲んでいると隣の席の男が話しかけてくる。駄洒落で追い払う。労働者風は酒と料理をもてあまし気味、「言わんこっちゃない」(言っていません)。自分はおかわりを頼もうか……。という文章、どっかで読んだことがあるような気がするのだけれど、勘違いか……。
(平野)