週刊 奥の院

大杉栄 『日本脱出記』 土曜社 952円+税

 1922(大正11)年11月、フランスの同志から翌年ドイツで開催される国際アナキスト大会の招待状が来る。有島武郎に資金をもらい、中国旅券を入手し、高利貸しの息子から借金する。厳重な監視下。尾行者とは顔見知りで、家の用事を頼むこともあったほど親しい。そのうえで自宅からたびたび脱出して、しばらくわからないようにする、そのテクニック。20年にも上海の会議に出席している。
 12月東京駅から神戸、船で上海(ここで旅券取得)、リヨン、パリ。
 大会は延期になりパリ滞在。5月1日、メーデー集会で演説、逮捕、追放命令。7月帰国。
 渡航中もパリ滞在中も本書原稿を書き、『改造』の7月号に「ヨーロッパまで」掲載。『東京日日新聞』には「パリの便所」「牢屋の歌」が6月・7月に掲載された。
 8月10日「入獄から追放まで」脱稿(『改造』9月号掲載)。9月1日関東大震災。16日弟・勇を訪問後、憲兵隊に連行・殺害される。本書解説の大杉豊氏は勇の子息。
 10月25日アルスより『日本脱出記』出版。初版1万部。アルスの広告「初版壹萬即日賣切増版續々出来」。
 土曜社代表が所有するのは「大正12年11月5日 20版」。
http://www.doyosha.com/
 ジャケット写真は、20年12月10日社会主義者同盟創立大会後の検束時。
 死後、机から発見された「外国雑話」「同志諸君へ」も収録。

■ 荒蝦夷フェア」新聞記事 読売新聞大阪版 4.10 
 http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20110410-OYO1T00106.htm?from=top
 写真は平野、コメントはF店長。ひょっとして、私、ビジュアル系?
荒蝦夷」Hさんからメール。
「地方の零細出版社、本が売れてナンボです! ……というのはいつものことなのですが、この度はそれを身に染みて痛感しております。読んでいただきたい本ばかりです。神戸のみなさんに、そうか、瓦礫の山になる前の東北って、仙台って、気仙沼ってこんなところだったのかと知っていただければ本望です」
(平野)4.10「神戸新聞」に書評。当店スタッフ、誰も気づいていない。顧客Mさんと、「古書波止場」のIさんは読んでくださっていた。掲載紙は後日。