週刊 奥の院


竹内修司 『1989年 現代史最大の転換点を検証する』 平凡社新書 760円+税
 元文藝春秋編集者。立教大学教授を経てフリー。戦後史を中心に著作活動。
「一九八九年という年は疑いもなく、現代史最大の分岐点として後世に記憶されるだろう」
第1章 昭和天皇のトラウマ
第2章 社会主義の目指したもの
第3章 冷戦の構図
第4章 訒小平ゴルバチョフの登場
第5章 天安門事件
第6章 東欧の「逆ドミノ革命」
第7章 ソ連・東欧の軛はなぜ緩んだか
エピローグ 1989年以後のソ連

 

年頭、昭和天皇裕仁が逝った。ソ連が十年に及ぶ苦闘の末、アフガニスタンから撤退した。中国で民主化を要求するデモを大弾圧する「天安門事件」が起った。中東欧・共産圏ではソ連の軛が一挙に緩み、ポーランドで「連帯」が総選挙に大勝利を博した。

 ハンガリー東ドイツチェコブルガリアルーマニアと続く。
また、フランス革命二百年、ナチスポーランド侵攻五十年、大恐慌六十年、ヴェルサイユ条約七十年、五.四運動、中華人民共和国成立、東西ドイツ成立、米中国交樹立も節目の年。
「ある時代がここで終わり、今に続く何かが始まった」ことは確か。
 共産主義の衰退。
 しかし、著者はある作家の発言を引用して、当時の思いを語る。

「……でも向こうは向こうで一生懸命にやってきたわけです。何億という民衆と、複雑な民族の問題を抱えて、あの党、軍、秘密警察の仕組みはそれなりに必要だったのかも知れない。それとこれまでの彼らなりに掲げた理想、努力といっておきますが、一切無視して、ただ『ざまあみやがれ』は人情がない。……彼らがああいう風になってしまった根本的な問題を人間というものを考える上で、もう少し謙虚に見据えたほうがいい……」(野坂昭如
……ユートピア思想の恐ろしさをいま、説く者は多いが、それを失ったことの恐ろしさを私たちが知るのは、たぶんこれからのことになるだろう。

(平野)