週刊 奥の院


井上ひさし 『日本語教室』 新潮新書 680円+税
 間もなく命日を迎えます。各社から本が出ます。
 本書は2001年10月から上智大学で行われた4回連続講義。
1.日本語はいまどうなっているのか
2.日本語はどうつくられたのか
3.日本語はどのように話されるのか
4.日本語はどのように表現されるのか

 最初の講義で、「母語は精神そのものです」。
 母語とは? 人が誕生して脳がどんどん育っていくときに、お母さんや愛情をもって世話をしてくれる人たちから聞いた言葉。

 言葉は道具ではないのです。第二言語、第三言語は道具ですが、母語第一言語は道具ではありません。アメリカでは、二〇世紀の前半に「言語は道具である」という考えが流行しました。アメリカの合理主義と相まって、一時期、世界を席巻しますけれども、やがてだんだんと、そうではない、母語は道具ではない、精神そのものであることがわかってきます。母語を土台に、第二言語、第三言語を習得していくのです。(略)つまり、英語をちゃんと話したりするためには、英語より大きい母語が必要なのです。だから、外国語が上手になるためには、日本語をしっかり――たくさん言葉を覚えるということではなくて、日本語の構造、大事なところを自然にきちっと身につけていなければなりません。

 小学校で英語の授業がいよいよ……、それでええの? 
(平野)