週刊 奥の院 第82号+1の2

今回は「新書」。各社の注目本。
■ 高澤秀次 『文学者たちの大逆事件韓国併合』 平凡社 760円+税
(目次) 「日本人」と「国語」のドラマトゥルギー  危機の時代の夏目漱石  永井荷風谷崎潤一郎  植民地朝鮮と〈日本人〉  大逆事件被差別部落  明治期日本の「理想」と「虚構」  戦後に〈在日〉する根拠とは何か  北海道という「植民地」の発見  三島由紀夫大江健三郎の「大逆」
■ 本橋哲也編 『格闘する思想』 平凡社 780円+税  
萱野稔人(政治思想) 海妻径子(ジェンダー) 廣瀬純(映画批評) 本田由紀(教育社会学) 白石嘉治(美学) 岡真里(文学) 西山雄二(哲学)
「それぞれの専門は大学制度や人文学や出版産業といった機構によって組織され認定されてきたが、彼ら彼女らに共通しているのは、そうした組織的枠組みが政治的にも経済的にも危機に瀕しているという認識」
 カバージャケットの解説から。

 働く人の三人に一人が非正規雇用の今日、私たちの生活はあらゆる面で危機に瀕し、暴力に晒されている。格差を広げるネオリベラリズム、排除を強めるネオナショナリズム。気鋭の英文学者に迎えられた七人の論客が、現状打破のために放った強靭な言葉たち。

水野和夫・萱野稔人 『超マクロ展望 世界経済の真実』 集英社 720円+税 
解説から。
「現在の世界経済危機を単なる景気循環の問題としてとらえるならば、この先を読むことはできない。むしろ、資本主義そのものの大転換、四百年に一度の歴史の峠に我々が立っていることを認識してこそ、経済の大潮流が見えてくる。」
嵐山光三郎大村英昭 『上手な逝き方』 集英社 700円+税
無縁社会」――ひとりぼっちで死ぬ人がいる。家族と暮らしている人は「葬式はいらない」と言う。私も葬式はいらないけど、ひとりぼっちはつらいと思う。
 大村は浄土真宗の僧侶、プロテスタント関学社会学を講じる。嵐山は、ご存知「不良中年」「人生下り坂」の作家。
「『おひとりさま』では寂しい。ひとはやはりちゃんと見送り、見送られたい。そのための作法とは?」
井上隆史 『三島由紀夫 幻の遺作を読む  もう一つの「豊饒の海」』光文社 820円+税
 著者は三島由紀夫文学館研究員。『豊饒の海』第四巻『天人五衰』に、最終原稿とは異なる「創作ノート」があった。幻の作品世界に挑む。
(平野)