週刊 奥の院

おせっかい教育論

週刊 奥の院 第75号の2
鷲田清一釈徹宗内田樹平松邦夫 『おせっかい教育論』 140B(いちよんまるびー)1200円+税 
 2009年10月1日、大阪市中央公会堂で開かれた「ナカノシマ大学キックオフ記念セミナー座談会」。書き下ろしを追加。
中之島」といえば大阪の中心であり、その「中央公会堂」は大正時代に実業家が寄贈した大阪のシンボルといえる建物。また、大阪大学が「21世紀懐徳堂」――市民と大学がともに学ぶ場として社学連携活動を進めている。
 大阪の民間の学問所というと、幕末の「適塾」が有名。それに先立つこと、1724年に商人たちが出資して「懐徳堂」を設立した。どんな時代でどんな学校だったのか。
 大阪(当時は大坂)は豊臣側の抵抗を抑えるため徳川幕府が直轄した。幕府から派遣された武士は少なく、行政は裕福な商人が担当し、この時代に選挙で代表を選び、その人たちが土木も含め自治事業を仕切った。1700年頃というと元禄文化華やかな時代。そのバブルがはじけて、町の将来を考えた時に重要なのは教育だと、有力商人たちが金を出し合った。この学校の一番の精神は、武士も町人も皆平等。授業料は払えるだけでよい、小判でもいいし、筆一本、半紙一束でもよい。仕事が忙しければ勝手に退出してもいい。(以上、鷲田さんの説明より)
「学校教育を子供たちに授けることによって、最大の利益を受けるのは共同体そのもの」。教育はビジネスではない、個人が利益を受けるものではない。(内田)
「学びの場では、『いちびり・おせっかい・猥雑』モードにスイッチを入れよう!」(釈)
「『学び』というのは知識の習得のことではない。人に何かを諭されることだ。口で、ではない。その人のふるまいや佇まいに諭される、そういう経験のことである」(鷲田)
(全国学力テストの結果公開について)「公開はするけれど、力を入れるのは独創的なものが伸びるかどうか。そこだけをチェックしてくれたらいい、と言うてるんです」(平松)
「読み書き・そろばん」ができれば自立できたはずなのに、今や、高校生でも大学生でさえも就職が難しい。優秀な経営者の皆さんはどうお考えなのだろう。どうしてメンバーに大坂商人の方々が参加していないのでしょう?
(平野)