週刊 奥の院

spin

週刊 奥の院 第54号 2010.5.7
◇新刊
林哲夫 編 『spin 07 ――ブックイベントのたのしみ』
A5判112頁ペーパーバック 装幀 林哲夫 表紙の写真は「口笛文庫」店頭。

[目次]
ブックイベントのたのしみ 南陀楼綾繁+石川あき子+郷田貴子+真治彩+次田史季
三宮ブックスのあったころ 平野義昌
幻脚記 六 ジャスミンティー 鈴木創士
巴里探墓日録 墓に○○をかけろ 林哲夫
淀野隆三日記を読む 七 林哲夫
みずのわ編集室 7 柳原一紱

 林哲夫個人編集の愛書家向け『spin』に、何故私の駄文が載るのか? 私が一番不思議に思っている。場違いでお尻がこそばゆい。真相はね、遅筆某が原稿間に合わなかった穴埋めでーす。緊急事態ということでお目こぼしを。
 
■黒木夏美『バナナの皮はなぜすべるのか?』水声社 2000円+税
 バナナの成分を分析するとか、人間歩行の力学的問題について研究する本ではない。
 《バナナの皮すべり》というギャグが、いつ、どこで、誰によって生みだされたのか? を解明していく本。
 まず喜劇映画の世界から入っていくが、やはり「笑い」の本質を考察しなければならない。著者はソクラテスアリストテレスに遡る。また「バナナ」そのものについても研究しなければならない。牧野富太郎の著作から白い果肉も「皮」であることを知る。「バナナ」と「笑い」にまつわる数々のエピソードが語られる。
 著者は1978年山口県生まれ。バスター・キートンがお好きで、HP「本の中のキートン」管理人。俳人でもある。
 ■藤澤衛彦著 伊藤晴雨著・画 礫川全次解題『日本刑罰風俗図史』 国書刊行会 3200円+税
 藤澤(1885−1917)は民俗学者、小説家。警察博物館館長も勤めた。
 伊藤(1882−1961)画家。知る人ぞ知る「責め絵師」。
 本書は1948〜51年にかけて全3冊刊行された「粋古堂」版をまとめたもの。
 「水責」「雪責」「蛇責」「釘牢」「瓢箪責」……、その他痛い・苦しい・つらい拷問・刑罰がいっぱい。私、そういうのは全部ダメなので説明省略。「蛇」は特にエゲツナイ、むごたらしい。
 ■米沢喜博『戦後エロマンガ史』青林工藝舎 1800円+税
 米沢は1953年生まれ、明治大学在学中にマンガ評論を開始。78年頃から編集、ライターとして商業誌で活動。80年から81年にかけて書いた〈マンガ史三部作〉によって「手塚治虫から最新の同人誌マンガにまで精通したマンガ評論家としての地位を確立」した。80年からコミックマーケット準備委員会代表。
 本書の元になった原稿を最初に書いたのは96年、『BAD TASTE』(フロム出版)、休刊のためしばらくブランクがあり、98年大田出版のマンガ復刻シリーズに巻末記事として再開。99年『コミック瑠璃姫』(あまとりあ社)に連載、休刊。02年『アックス』(青林工藝舎)でようやく長期連載。だが完結目前、06年10月死去。
 目次から。
エロマンガ前史】カストリ雑誌、手話20年代のエロ・ヴィジュアル、戦後エロマンガ史・番外編。
【戦後エロマンガ史】1954年〜 大人漫画誌の始まり他 
1966年〜 青年マンガ誌スタート、エロ雑誌と青年誌の間他 
1969年〜 70年という時代を前に 青年劇画誌の隆盛と挫折、コメデイ、実話誌、ピンクマンガ他 
1973年〜 「60年代末からドラスティックに変貌していったマンガの進化が一度終焉を迎え、次の時代に向けた新たな方向が模索されていった年」 
1975年 少女マンガ、ジャンプ、チャンピオン、TVアニメ、エロ劇画誌創刊ラッシュ、エロとサブカルと70年代末他 
1978年〜 三流劇画ブーム・ムーブメント!?他 
1980年〜 エロ劇画界の再編とロリコンマンガ、美少女コミック他 
1989〜91年 美少女コミック誌の隆盛と危機、「有害」コミック問題 
◇神戸の本
 ■『訪ねてみよう神戸の遺跡』神戸市教育委員会 200円(税込)
 遺跡は、発見されるときちんと調査し記録される。しかし、多くは調査終了すると消滅する。公園など保存されるのはわずか。本冊子は現地見学可能な遺跡を20ヵ所紹介。
 ◇今週のもっと奥まで〜
 ■内田春菊『準備だけはあるのに、旅の』中公文庫 686円+税
 高級牛乳宅配経営・牛田夫妻、妻は業態を変えたい。儲からないリサイクルショップ経営・夢子と新商売を。「起業」「経済的自立」「離婚願望」……? 結婚生活は爆発寸前。他の登場人物もヘンな人ばかり。紙版引用は、アル中のベビーシッター、雇い主に傘を突き刺されて、傷口がいやらしい穴になって彼氏と……。
 ◇5月のフェア
■「海文堂店長の〈身辺整理〉蔵書放出100円均一」階段下 5.1〜5.31
ブログ「海文堂書店日記」5.3店長日記をご覧ください。
■「中村祐介 グッズと本」東入口 5.1〜5.31
 森見登美彦『夜は短し歩けば乙女』や角川文庫の「赤川次郎」作品のイラストでおなじみ。画集『Blue』(飛鳥新社・3800円+税)の他、缶バッジ、ステッカー、レターセット、クリアファイルなど販売。
■「本の雑誌がおすすめする日記本+α」西入口 5.1〜5.31
 『新潮』3月号+『本の雑誌』スタッフ+海文堂・文芸クマキによる選書。
(平野)休みでも休まず書いてる、エライなー。