kaibundo2010-02-14

■『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』    万城目 学著/筑摩書房 860円+税
 かのこちゃんは小学一年生になりたての女の子。学校のこと、友達のこと、夏休みの自由研究に友達と行くお祭り。すべて初めてのことばかり。マドレーヌはかのこちゃんちのアカトラの外猫で、柴犬の玄三郎の妻になって半年という役どころ。彼らを中心にお父さんお母さん、親友のすずちゃん、キジトラの和三盆、三毛猫のミケランジェロたちがかのこちゃんの経験とマドレーヌの活躍を盛り立てます。
 ポコンと知恵が啓かれたかのこちゃんのキャラクターが、実に利発で魅力的。直木賞候補にもなったことのある万城目さん、こんなヤングアダルト向きのおはなしもばっちり適任の作家だったんですね。ヤングアダルトでない私にとっても、もう一度読み返したくなる、可愛らしく面白くほろりとさせるお話でした。
万城目さんは相当な猫好きですね。冒頭の、猫のあくびを「ふが」と表現するところで、既に確信してしまいました。(実際は猫アレルギーで触ることも出来ないそう)
 筑摩プリマー新書は、多様なジャンルの専門家が分かりやすい言葉を使って門戸を開いてくれる、若い人に向けた(でも実は大人にも人気の)教養新書です。すべて絵がちがうというなんとも贅沢なカバーはクラフト・エヴィング商會のデザインで、全点面陳したくなる表紙です。そのシリーズに突然変異のように紛れ込むんですねえ、小説が。この「かのこちゃん〜」もそのひとつなのです。本屋にとっては「わっ、売りにく!」という本で、皆さん、本屋で探す時は、文芸書の万城目学の棚だけでなく、プリマー新書の棚とノベルスの棚も探してみてくださいね。どこかにあるはずです。ちなみに海文堂では、プリマー新書と文芸新刊平台にあります。(その後は万城目棚の前に移動します)
(熊木)