雑記　岡崎武志さん新刊 - 海文堂書店日記

　岡崎武志さんの新刊２冊。
　■『太宰萌え　入門者のための文学ガイドブック』毎日新聞社　１４２９円＋税
　「太宰」ファンと公言することは恥かしいという気持ちがある。とくに男性。しかし、太宰作品は大手各社の文庫にあり、読まれ続けている。
　「恥ずかしさを楽々と乗り越えて、太宰はこんなにも読まれたがっている。しかも女性読者が多い」
　「女性は本能的に知っている。山ほどいる古今の作家のうち、誰が、自分に本当のことを教えてくれるかを」
　帯のことばがいい。
　――いいじゃない、弱くても。失格でも、こんなに愛しい。――
　　
　■『あなたより貧乏な人』メディアファクトリー　１２００円＋税
　「貧困」が大きな社会問題。でも、岡崎さんは書く。
　「日本人はアジアの片隅の小さな島国で、ずっと貧しさに慣れて、つつましいながら独自の文化を築き上げてきた。貧しさが似合う国民なのだ」
　単純な自己責任論ではない。メッセージは「貧乏を恐れるな！」。
　文学者はじめ代表的日本人の、貧しくても美しい豊かな精神・思想を紹介する。
　「貧乏でも死ぬまでモテモテの詩人　金子光晴」
　「貧しくても頭のなかは無限の広がり　稲垣足穂」
　「夢の中でこれほど贅沢な貧乏を　森茉莉」
　「借金の天才　三好達治」
　など。イラストも岡崎さん。

　この２冊だけでも、岡崎さんの本が読者に勇気と優しさを与えてくれることがわかる。タダの酒好きお笑い作家ではない。
うちの娘は、私が『あなたより貧乏な人』を持ち帰った時、素直に直感したままのことを言い放った。
「父さん、この本に慰めてもらうんか？」
（平野）