kaibundo2009-09-10

■『通訳ダニエル・シュタイン 上』リュドミラ・ウリツカヤ著/新潮社  2000円+税
 ポーランドユダヤ人である主人公ダニエル・シュタイン。母親がゲットーから脱出した直後に生を受けて、出自を偽りナチの通訳となってユダヤ人を助けます。その後カソリック神父としてイスラエルに渡り… こんな波乱万丈の人生には実在のモデルがいるのですが、多くの資料を基にして著者が選んだのが、書簡や日記や録音テープに語らせる形式のフィクションなのでした。
 日本ではユダヤ人について深く認識している人はそう多くないと思うのですが、それを題材にした小説や映画で「実例」として知る機会は少なからずあるはず。上質な選書で信頼されているクレスト・ブックスのシリーズとして刊行された本書は、そんな世界を知るのにふさわしい一冊だと思います。
 著者のウリツカヤは1943年生まれのロシアの作家。クレスト・ブックスには、他に全然作風の違う「ソーネチカ」が入っていてこちらも人気があります。
 新潮社のホームページで本書の「立ち読み」をしてみてください。目次が長いので本文は少しですが、ぐいぐい読めそうという印象です。なお、下巻は9月下旬の発売予定です。ご予約承ります。
(熊木)