週刊 奥の院 8.24

■ 柳家喬太郎 『落語こてんコテン』 筑摩書房 1700円+税 
 ポプラ社Webマガジン連載(2008.7〜2012.3)に書き下ろし11篇プラス。古典落語50席のあらすじ、聞き所、演じ手たちの苦心とそれぞれの語り方の違いなど。
 例えば居残り佐平次 
 落語絡みの映画の話から始まる。落語家が主役のもの、落語界を舞台にしたもの、実在の落語家を描いたもの、落語家が出演しているもの、落語家が原作者であるもの、それに“落語”のストーリーをモチーフにしたもの。
 『幕末太陽伝』は廓話「居残り佐平次」から。川島雄三監督、フランキー堺主演。
 仲間が誘い合って遊廓に繰り出す。一晩遊んで翌朝、佐平次は皆から金を徴収。その金を自分の母親に渡してくれ、と言付けて皆を帰す。自分は客のフリをして居座って、払いをのらりくらりと延ばしているが、ばれて布団部屋に押し込められる。
 この男、万事器用で見世が暇な時間に女たちの雑用――繕いもの、お使い、手紙代筆など何でもこなす。夜はお座敷に顔を出して幇間顔負けの人気者になる。座敷のご祝儀を独り占めして、見世の若い者(妓夫太郎)が店主に苦情。店主が佐平次に意見すると、自分は悪人で役人がいつ来るかもしれないと言う。店主、借金を棒引きにしたうえ小遣い・着物まで支度して追い出す。実は、佐平次は「居残り」を稼ぎにしていた。
 落語のサゲは、真相を知った店主、
「畜生、どこまで人をおこわにかけたか」
「へへ、あなたの頭がごま塩でございますから」

「おこわ」が若い人にはわからないでしょう。「おこわにかける」とは「一杯くわす、人をだます」。「おこわ」は「強飯、赤飯」。「赤飯」にかけるのは「ごま塩」。

 代表的な廓話のひとつです。確かに人を騙すんだけど、女を騙すとかじゃないから、カラッとしてていい。騙される見世の方に悪いところは何もないんで、まぁ気の毒ではあるんだけど、なんだか痛快じゃありませんか。……
 (代表的な演者は、昭和の名人、五代目古今亭志ん生、六代目三遊亭圓生、平成では古今亭志ん朝立川談志喬太郎の師匠・さん喬の持ちネタでもある。新作派・三遊亭圓丈も演じる)
 僕もですね、いつか演ってみたいとずっと思ってるんですが……ただ、合わないだろうな俺には……。それに何しろ大ネタだしね。いや、難しい噺ですよ『居残り』は……。
(もしや演るんなら)
 主役・佐平次のモデルをね、故・植木等さんで演ろうと思って。なんかホラ、口先で調子よくス〜イスイっといく感じ、ね? 佐平次っぽくないスか? ……

 見世の主はハナ肇、妓夫太郎が谷啓、一緒に遊びに行く友だちが犬塚弘桜井センリ安田伸石橋エータロー、花魁に淡路恵子。これも若い人には通じないかも。
 他に、落研時代の思い出も。


◇ うみふみ書店日記
 8月23日 金曜
 編集者Yさん。♥
 P出版Iさんも。♥
 倉敷の書店員さん3名ご来店。しあわせ一杯。♥♥♥
 常連カルチャーSさん、「これからどこで買え、言うねん!」。怒ってはる。
 退社後、ゴローちゃんとミーチング。
【海】写真集決定。 
海文堂書店の8月7日と8月17日』(写真・キッチンミノル、夏葉社、1300円+税)、9.21発売。


(平野)